君に届くまで~夏空にかけた、夢~
「修司と一緒に居たいから」
……え。
「彼女になれないなら、それでもいい。でも、せめて、マネジャーとしてどもいいから。一緒に居たい」
「……何……言ってんだよ」
猛烈に脈が速くなった。
鞠子の小さな体が小刻みに震え始める。
「だってそうでしょ」
と鞠子はうつむきながら声を震わせた。
「わたしの好きな人。野球しか見てないんだもん。野球に夢中で……こっち見てくれないんだもん」
まさか。
「彼女になれないのは分かった。でも、せめて、一緒に同じ夢、追いかける事くらい……いいでしょ」
まさか。
鞠子の好きなやつって、まさか。
「おい。ちょっと、ちょっと待て」
ぐん、と身を後ろへ引いた時の衝撃で、ぶつかったテーブルの脚が軋んだ。
と、同時に弾かれたように顔を上げた鞠子は、真っ赤になっていた。
「わたしの好きな人、修司だよ」
テーブルをごろごろ転がって、ボールが落ちて来た。
テーン。
テン、テン、テン、テン。
「……あ、ええと」
意外にも冷静な自分に驚いた。
先に目を反らしたのは、おれだった。
真っ直ぐ見つめてくる鞠子の目を、これ以上見つめ返すなんてできなかった。
「あのさ、鞠子」
「あ、いいの!」
いいの、いいの、と鞠子がおれの手をそっと離して跳び上がるように立ち上がった。
「返事が欲しいわけじゃないから」
今の忘れて、修司の記憶から抹消して、そう言った鞠子は鞄を抱きしめて、部室を飛び出して行った。
「ああ……ああああ」
声なのか、溜息なのか判別できないものを吐き出して、床に背中から一気に倒れ込む。
蛍光灯の光が眩しくて右手を上に伸ばして遮ろうとしたけれど、指の隙間からこぼれて、こぼれて。
やっぱり目を細める。
あの日も眩しくて、こうして目を細めたっけな。
……え。
「彼女になれないなら、それでもいい。でも、せめて、マネジャーとしてどもいいから。一緒に居たい」
「……何……言ってんだよ」
猛烈に脈が速くなった。
鞠子の小さな体が小刻みに震え始める。
「だってそうでしょ」
と鞠子はうつむきながら声を震わせた。
「わたしの好きな人。野球しか見てないんだもん。野球に夢中で……こっち見てくれないんだもん」
まさか。
「彼女になれないのは分かった。でも、せめて、一緒に同じ夢、追いかける事くらい……いいでしょ」
まさか。
鞠子の好きなやつって、まさか。
「おい。ちょっと、ちょっと待て」
ぐん、と身を後ろへ引いた時の衝撃で、ぶつかったテーブルの脚が軋んだ。
と、同時に弾かれたように顔を上げた鞠子は、真っ赤になっていた。
「わたしの好きな人、修司だよ」
テーブルをごろごろ転がって、ボールが落ちて来た。
テーン。
テン、テン、テン、テン。
「……あ、ええと」
意外にも冷静な自分に驚いた。
先に目を反らしたのは、おれだった。
真っ直ぐ見つめてくる鞠子の目を、これ以上見つめ返すなんてできなかった。
「あのさ、鞠子」
「あ、いいの!」
いいの、いいの、と鞠子がおれの手をそっと離して跳び上がるように立ち上がった。
「返事が欲しいわけじゃないから」
今の忘れて、修司の記憶から抹消して、そう言った鞠子は鞄を抱きしめて、部室を飛び出して行った。
「ああ……ああああ」
声なのか、溜息なのか判別できないものを吐き出して、床に背中から一気に倒れ込む。
蛍光灯の光が眩しくて右手を上に伸ばして遮ろうとしたけれど、指の隙間からこぼれて、こぼれて。
やっぱり目を細める。
あの日も眩しくて、こうして目を細めたっけな。