君に届くまで~夏空にかけた、夢~
鞠子さあ。


お前、将来は総理大臣にでもなるのかよ。


つうかさあ。


その訳分かんねえ習い事、将来、本当に何かの役に立つのかよ。


お前、いつもつまんなそう。


人生楽しいのかよ。


つまんねえ顔して、好きでもない事イヤイヤ続けて、面白いのかよ。


やめちゃえよ。


そんなつまんねえこと。


鞠子さ。


オレらと一緒に、野球やろうぜ。


「……女の子が野球してどうすんだ、って。男は甲子園行けるけど、女は行けないじゃん、て。鞠ちゃん言ったらしくて。そしたら、そいつ」


お前、知らねえのか。


女だって、甲子園行けるんだぜ。


騙されたと思って、野球部入ってみ。


マネージャー、やってみ。


母親の期待を裏切りたくない。


その一心で続けてきたという習い事。


帰っても冷え切った家。


極力、家に居たくなかったという鞠子は、幼なじみの一言に背中を押され、親の大反対を振り切り、野球部のマネージャーになった。


女だって、甲子園行けるんだぜ。


そして、鞠子が中3の春。


中学総体に向かって部がひとつにまとまり始めていた時、その噂が学校中に広がり、波紋をよんだ。

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