君に届くまで~夏空にかけた、夢~
「野球部の顧問とPTA会長の不倫」


始めこそただの噂に過ぎなかったものの、野球部の父兄がついにその現場を目撃し、事態は収拾がつかなくなってしまったのだ。


顧問はその事実を認め、懲戒免職処分。


鞠子の御袋さんは離婚届けを残し、失踪。


鞠子の親父さんは次第に家に寄り付かなくなってしまった。


同時に、総体を目前に顧問不在となった野球部。


徐々にそのバランスは崩れ、ある日、部員同士が口論になり暴力沙汰にまで発展してしまったのだ。


「原因が何だったのかまでは、千夏も分かんねえみたいなんだけど」


当時、エースだった鞠子の幼なじみとキャプテンが、グラウンドの真ん中で殴り合いをしてしまったらしい。


野球部は1ヶ月の活動休止。


その翌日から、鞠子の幼なじみは不登校になってしまった。


そして、野球部の謹慎が解ける前日、事態は取り返しのつかない方向へ動いた。


暴力傷害事件。


不登校になっていた鞠子の幼なじみは、年上の不良グループとつるむようになっていて、連日連夜、遊び歩いていたらしい。


彼はその不良たちと繰り出した夜の繁華街で飲酒をし、少年院へ送られるほどの傷害事件を起こしてしまったのだ。


桜花大附属の野球部に入って、みんなで甲子園行こうぜ。


大人見返してやろうぜ。


鞠子の親、見返してやんだよ。


このままじゃ悔しいだろ。


何か一発、お見舞いしてやんだぜ。


甲子園行って、人生変えてやろうぜ。


その約束を、鞠子のところに置き去りにしたまま。


附中野球部は無期限の活動休止を強いられ、結局、総体は出場辞退という形に追いやられてしまった。
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