君に届くまで~夏空にかけた、夢~
しばらくしてやっと返って来たのは、


『本当が。楽しみだな。ありがたい、ありがたい……ああ、ありがたい』


泣き虫なばあちゃんの涙交じりの声と、鼻水をすする音だった。


ばあちゃんは、本当に泣き虫で困る。


『修司』


「あー?」


『おめえ、次はいつ帰って来れるんだ?』


「秋の大会終わってからだど思う」


『んだが。怪我するなよ』


そして、心配性だから困る。


「しねえよ」


『ちゃんとご飯食ってるんだが?』


「食ってる。食ってるんだけどよー」


ばあちゃんのカレーライス食いでえー、とおれが言うと、ようやくばあちゃんが笑った。


「寮の飯うめえんだけどよ。カレーはイマイチでや。具が小っせえんだ」


ごろんごろんのじゃがいも。


ごとごとのにんじん。


もっさりの玉ねぎ。


それから、どっさりの豚肉。


ちょっとニンニクがきつくて、とにかく、ばかみたいにでかい具がごろごろ入ったカレーライス。


あれが食いたい。


おれはカレーライスと言うのに、じいちゃんもばあちゃんもライスカレーと言う、あれが食いたい。


『したらあれだな。次帰って来る時は教えれよ。ばあちゃん、ライスカレーこさえで待ってるがらな』


「分がった」


話し終えたあと風呂に入って、洗濯を回していると、


「平野」


背後から呼ばれ振り向くと、入り口に南波が立っていた。


「ほら、これ」


と南波は持っていたやけにでっかいカップラーメンを、おれにポーンと投げてきた。


「えっ、何」


条件反射でとっさに両手でキャッチすると、


「飯、まだ食ってねえんだろ。食堂、もう閉まってるし。おれの非常食分けてやるよ」


そんなんで悪いな、と南波はそっけなく踵を返した。


でも、すぐに立ち止まって、背を向けたままこう言った。
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