君に届くまで~夏空にかけた、夢~
たまにはカップラーメンも悪くない。


が。


「ったくよー! うるっせえなあー!」


ガゴー、ガゴー。


「くそっ、ビエラ! 春倉ビエラ!」


怪獣のようないびきをかきながら熟睡する誉の真横で食うカップラーメンは、食った気がしない。


でも、これがまた、美味かった。


洗濯物を干して、歯磨きをして、電気を消してベッドに入った時にはもう、日付が変わっていた。


狭い部屋に、真夜中の月明かりが差し込んでくる。


ガゴー、ガゴー。


「るせっ! ビエラ! あとで覚えてろよ!」


いびき大魔王の誉に背を向けて、壁に向いた。


月明かりがぼんやりと、壁に書かれた歴代の四字熟語たちを照らし出す。


いろんな思いがある。


ここに書き残して行った全員が、様々な葛藤と決意を胸に抱いていたはずだ。


そうだなあ。


おれは?


もし、時が来て、この部屋を後にする日が来たら、おれは何て書き残して行くんだろう。


それまではしばらく、とにかく我武者羅に行こうか、おれ。








はい。


選手宣誓。


【我武者羅】


桜花大附属高等学校


野球部  1年


平野 修司






でも、順風満帆な日々はうまいことやって来てはくれないものだ。


秋季大会を目前に、桜花野球部の輪がいびつに歪み始めたのは、熱い夏休みが明けて間もなくの事だった。





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