君に届くまで~夏空にかけた、夢~
「いやっ。そんな仲間に入らないもんっ。花湖、いじわるな人好きじゃないもんっ」
確かに花湖はわがままで口うるさくて、時々本気でうざいけど。
おれにとっては、大切な幼なじみなのだ。
――しゅうちゃん。泣かないで
父さんと母さんが死んだ日も、葬式の間中もずっと、花湖はおれの側にいてくれた。
悲しくてどうにもならなくて、ただ泣いてばかりだったおれの隣にぴったりよりそって。
片時も離れず、手を握ってくれた。
――大丈夫よ。しゅうちゃん
ずっと、ずーっとだ。
――かこが、いっしょにいるよ。泣かないのよ。しゅうちゃん
だから、花湖は大切な幼なじみだ。
どっかに落っことすなんて、おれにはできないんだ。
「ぬおお! 巨大モンスター坂が出現したぞ!」
目の前に、急こう配の坂が見えた時、健吾が叫んだ。
「一気に上りきれよ、響也!」
「てめ。他人事だと思って」
響也が静かに言い返した、その次の瞬間だった。
上り坂手前のひまわり畑にさしかかった時だ。
花湖がおれにぎゅううっと抱きついて、とんでもない事を叫んだ。
「花湖、修ちゃん大好きー!」
「……なっ」
キキイーッ、と2台分の急ブレーキ音が重なって響いた。
「な……何を……今、君は何を」
健吾がアンパンをごくりと飲み込む。
ぎょっとして花湖を見つめる響也の額に汗が滲んでいる。
さわさわと吹き抜ける西風に、満開のひまわりがそよいでいた。
背中に花湖の感触を感じながら、おれは放心状態に陥った。
「だ……大告白だな」
いや、前からうすうすは気付いていたけど、と響也が呟くと、
「いや、今のは問題発言だろ」
と健吾がひきつり顔で、操り人形のようにまた新しいアンパンを袋から取り出した。
「花湖、決めた!」
次の瞬間、さらに空気が別の意味で凍りついたのは言うまでもない。
確かに花湖はわがままで口うるさくて、時々本気でうざいけど。
おれにとっては、大切な幼なじみなのだ。
――しゅうちゃん。泣かないで
父さんと母さんが死んだ日も、葬式の間中もずっと、花湖はおれの側にいてくれた。
悲しくてどうにもならなくて、ただ泣いてばかりだったおれの隣にぴったりよりそって。
片時も離れず、手を握ってくれた。
――大丈夫よ。しゅうちゃん
ずっと、ずーっとだ。
――かこが、いっしょにいるよ。泣かないのよ。しゅうちゃん
だから、花湖は大切な幼なじみだ。
どっかに落っことすなんて、おれにはできないんだ。
「ぬおお! 巨大モンスター坂が出現したぞ!」
目の前に、急こう配の坂が見えた時、健吾が叫んだ。
「一気に上りきれよ、響也!」
「てめ。他人事だと思って」
響也が静かに言い返した、その次の瞬間だった。
上り坂手前のひまわり畑にさしかかった時だ。
花湖がおれにぎゅううっと抱きついて、とんでもない事を叫んだ。
「花湖、修ちゃん大好きー!」
「……なっ」
キキイーッ、と2台分の急ブレーキ音が重なって響いた。
「な……何を……今、君は何を」
健吾がアンパンをごくりと飲み込む。
ぎょっとして花湖を見つめる響也の額に汗が滲んでいる。
さわさわと吹き抜ける西風に、満開のひまわりがそよいでいた。
背中に花湖の感触を感じながら、おれは放心状態に陥った。
「だ……大告白だな」
いや、前からうすうすは気付いていたけど、と響也が呟くと、
「いや、今のは問題発言だろ」
と健吾がひきつり顔で、操り人形のようにまた新しいアンパンを袋から取り出した。
「花湖、決めた!」
次の瞬間、さらに空気が別の意味で凍りついたのは言うまでもない。