君に届くまで~夏空にかけた、夢~
「今年の夏も、終わるんだな」


ぽつり、響也がつぶやいた。


「でもまたすぐに来るぜ。夏は、あっと言う間にやってきて、あっという間に終わるんだ」


と、健吾が言う。


「すごーい。空が真っ赤ー!」


おれの肩に小さな手を乗せて、花湖がぐんと立ち上がる。


坂の上に広がる、晩夏の夕空。


見上げた空は、この胸を焦がすような、雄大な茜色だった。










例えば。


例えばの話、だ。


あの日、15歳のおれたちが見上げた空。


あの瞬間、同じ瞬間に、別の場所で、君も同じあの空を見ていたのかもしれない、と想像してみる。


照れくさいから、絶対に口に出す事はしないけど。


もしかしたら、同じ空を見ていたのかもしれないと思うと。


ちょっと、運命を感じる。


こんな事を言ったら、きっと君は笑って、おれの背中に隠れてしまうと思うんだけど。


やっぱり、運命を感じるんだ。


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