君に届くまで~夏空にかけた、夢~
しかも、暑さ対策を兼ねているので、グラウンドコートを着ながらという。


まさに、地獄さながらだ。


春先と秋にも強化練習はあって、それは1週間だ。


放心状態のまま風呂に入って、洗濯をして寝て、寝たと思ったら朝が訪れている。


それでも、みんな、弱音なんか吐かないしきちんとこなすのだった。


強化練習の最終日だった。


全てのメニューを終えて、先輩がグラウンドを去ったあとだった。


「おれはこの4日間を耐え抜いた事で、超人になれた気がするぜ」


へへへ、と完全に怪しいテンションの誉が、スパイクに付着した土を落としながら言った。


「はああああ……早く風呂に入りてえ」


「体が痛え」


「おれ、桜花、甘く見てた」


「なに。じゃあ、やめんの?」


「やめねえよ! しばくぞ、てめえ」


やんや、やんやと、1年の声が飛び交う。


あれだけのきつい練習をしたっていうのに、人間という生き物はどこまでタフなのだろう。


「おっし。修司、誉、お先」


と1番先にスポーツバッグを背負って爽やかに手を上げたのは、1年生のリーダー、堤一真(つつみ かずま)だ。


この大人数だとやはり合う合わないがあって、ばらばらになってしまうのもしょっちゅうだ。


でも、一真はなんだかんだでみんなをひとつにまとめてくれる。


「みんなも早く上がって、明日の練習に疲れを引きずらないようにな」


女みたいなくりくりの目に、ハーフ顔が印象的だ。


誰に対しても平等で真摯で、先輩や監督、コーチからも厚い信頼を得ている。


スパイクの土を払い落とし、スポーツバッグを背負って、みんながぞろぞろとグラウンドを出て行く。


「また洗濯場混むぜ」


おれらも急ごう、と誉がへろへろの声で言った。
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