君に届くまで~夏空にかけた、夢~
「あいつらと会える日は、すぐ来るよ」


たぶん、この夏が終わってもまたすぐにやってくる次の夏のように。


「どうしてそう思うの?」


「あいつら、意地でも勝ち進んでくるからだよ」


鞠子と並んで歩きながら、こう思う。


響也と健吾は、そういうふたりだ。


おれたちの代が来る頃、南高のエースは響也で、健吾がキャッチャーで。


必ず、どこかのブロックで、おれたちは対戦するんじゃねえか、って。


思う。


そして、こんな事まで考える。


もしも、という前提で。


例えば、桜花が負ける日が来るとしたら、それは他のどこでもなく、相手は南高じゃないだろうか、と。


響也も健吾も、そういうやつらだ。


きっと、真っ向勝負してくるはずだ。


もちろん、負ける気はさらさらねえけど。


もちろん、勝つのはこの桜花なんだけど。


まあ、例えば、の話なんだけど。


「言っとくけど、南高はあなどれねえぞ。特に、あのふたりはやべえ」


とわくわくしながら、鞠子の歩幅に合わせて歩く。


ふふふ、ははははは、と鞠子が可笑しそうに笑う。


「なんか、修司、楽しそう」


「へ?」


「夏井くんと岩渕くんの話題になった途端、目の色が変わったもん。本当に仲良しなんだね」


「まあな」


おれの、人生生涯の親友たちだからな。


「おれの夢なんだよな。あいつらと本気で真っ向勝負すんのが夢なんだ」


こればかりは、譲れない。


「じゃあ、また明日な。気を付けて帰れよ」


「うん」


と、裏門へ別れる小道で鞠子と別れようとしていた時だ。


寮の玄関から出て来た人が声をかけてきた。


「あっれ。何やってんのよ、お前ら」


ぎくりとした。


菊地先輩だった。


風呂上りだったようで、Tシャツにハーフパンツにサンダルというラフな格好だった。


「あ、菊地先輩! お疲れ様でした」


と鞠子が挨拶をする隣で、おれは案山子のように立ち尽くした。
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