君に届くまで~夏空にかけた、夢~
本当に、清々しい顔だった。
「強いからって……何なんだよ」
午後の部室はもう蒸し風呂状態で、というより、もう完全にサウナで。
ただ突っ立っているだけなのに、だらだら、汗が首筋を流れる。
もうじき、先輩たちがグラウンドに入って来る。
また、きつい練習だ。
行こう。
グラウンドに、行こう。
頭からはそう指令が出ているのに、すぐには足が動いてくれなかった。
「頼るとか……頼らないとか……」
一体、何なんだ。
わたし強いから、ひとりでも大丈夫だから、平気だから、って。
……何なんだ。
鞠子が笑顔で言ったその言葉たちの意味を、おれはまったく分かっていなかった。
開け放たれた窓の外に視線を飛ばす。
ここから真っ直ぐに、おれの守備位置が見える。
そこに、陽射しが燦燦と降り注いでいる。
「あっち……」
練習着の袖で額の汗をぬぐい、帽子を深くかぶり直した。
行こう。
部室を出て、胸いっぱいにたっぷりの青空を吸い込んだ。
何度も何度も、吸い込んだ。
でも、おれの肺はきっと何か所にも小さな穴が空いているのだと思う。
吸い込んでも、吸い込んでも、どこかからすかすかと漏れ出すのだ。
いつまでたっても、胸が満たされる事はなく、すかすかしていた。
見上げた空は、泣けるほど青く清潔で。
せんべいのようにバリバリと砕けて落ちて来そうなほど青くて。
もう一度、帽子を深くかぶり直す。
そして、おれは今日も、夏空の下で煌めくグラウンドに飛び出して行く。
練習は午後1時きっかりに始まって、いつもよりかなり早い19時に終わった。
明日から、2学期が始まる。
明後日からは、休み明けテストだ。
それもあるし、強化練習の疲れが残っているだろうからという事もあって、練習が早く終わったのだ。
「強いからって……何なんだよ」
午後の部室はもう蒸し風呂状態で、というより、もう完全にサウナで。
ただ突っ立っているだけなのに、だらだら、汗が首筋を流れる。
もうじき、先輩たちがグラウンドに入って来る。
また、きつい練習だ。
行こう。
グラウンドに、行こう。
頭からはそう指令が出ているのに、すぐには足が動いてくれなかった。
「頼るとか……頼らないとか……」
一体、何なんだ。
わたし強いから、ひとりでも大丈夫だから、平気だから、って。
……何なんだ。
鞠子が笑顔で言ったその言葉たちの意味を、おれはまったく分かっていなかった。
開け放たれた窓の外に視線を飛ばす。
ここから真っ直ぐに、おれの守備位置が見える。
そこに、陽射しが燦燦と降り注いでいる。
「あっち……」
練習着の袖で額の汗をぬぐい、帽子を深くかぶり直した。
行こう。
部室を出て、胸いっぱいにたっぷりの青空を吸い込んだ。
何度も何度も、吸い込んだ。
でも、おれの肺はきっと何か所にも小さな穴が空いているのだと思う。
吸い込んでも、吸い込んでも、どこかからすかすかと漏れ出すのだ。
いつまでたっても、胸が満たされる事はなく、すかすかしていた。
見上げた空は、泣けるほど青く清潔で。
せんべいのようにバリバリと砕けて落ちて来そうなほど青くて。
もう一度、帽子を深くかぶり直す。
そして、おれは今日も、夏空の下で煌めくグラウンドに飛び出して行く。
練習は午後1時きっかりに始まって、いつもよりかなり早い19時に終わった。
明日から、2学期が始まる。
明後日からは、休み明けテストだ。
それもあるし、強化練習の疲れが残っているだろうからという事もあって、練習が早く終わったのだ。