君に届くまで~夏空にかけた、夢~
寮に帰って飯を食って、風呂に入って、たまにはじいちゃんとばあちゃんに電話でもしてみようかと思っていた。
でも、そういう気分でもない。
このままではむしゃくしゃして、眠れそうにない。
「おれ、もう少しバット振ってから行く」
と誉に告げて、部室にバットを取りに行くと鞠子が居て、データをまとめていた。
ケースからバットを1本引き抜いた時、鞠子が笑いながら話しかけてきた。
「自主練ですか? 精が出ますね」
「うん。なんか、足んなくて」
「さすが。野球ばか」
「うっせ。で、鞠子は帰んないのか」
逆に聞くと、鞠子はキャンパスノートにシャープペンシルをさらさら走らせながら、うん、と頷いた。
「昨日もやったんだけどね。でも、あと少しだから終わらせちゃいたくて」
「そっか。無理すんなよ」
じゃあな、と声を掛けて、おれはグラウンドに繰り出した。
もう、上空には星が幾つか輝き始めていて、夜の気配が迫っていた。
「よっしゃ。やりますか」
誰も居なくなったがらんとしたグラウンドの片隅で、バットを振り始める。
最初は一振り一振り、その一球を想定しながら丁寧に振っていたけど、辺りが暗くなり始めるとそれに比例するように雑になっていった。
50本を超える頃にはスイングの音も雑になった。
そこからはもう、適当乱暴ガサツもいいとこだった。
こんな無鉄砲なスイング、何千回やったって身にならない事は分かっている。
意味がないのだ。
でも、やめる事ができなかった。
体から何かを振り落したい。
このむしゃくしゃする、何かを。
その一心でがむしゃらに、頭が狂ったようにバットを振り続けた。
蒸し暑い空気を真っ二つにざくざく切り刻むように、一心不乱に振り続けた。
「すみませーん!」
その声にハッとした時にはもう完璧な夜になっていて、辺りは真っ暗になっていた。
「あのー! すみませーん!」
その声はライトの奥のフェンスの向こうから聞こえる。
女の声だった。
数名いるのが分かった。
「野球部の人ですかーっ?」
でも、そういう気分でもない。
このままではむしゃくしゃして、眠れそうにない。
「おれ、もう少しバット振ってから行く」
と誉に告げて、部室にバットを取りに行くと鞠子が居て、データをまとめていた。
ケースからバットを1本引き抜いた時、鞠子が笑いながら話しかけてきた。
「自主練ですか? 精が出ますね」
「うん。なんか、足んなくて」
「さすが。野球ばか」
「うっせ。で、鞠子は帰んないのか」
逆に聞くと、鞠子はキャンパスノートにシャープペンシルをさらさら走らせながら、うん、と頷いた。
「昨日もやったんだけどね。でも、あと少しだから終わらせちゃいたくて」
「そっか。無理すんなよ」
じゃあな、と声を掛けて、おれはグラウンドに繰り出した。
もう、上空には星が幾つか輝き始めていて、夜の気配が迫っていた。
「よっしゃ。やりますか」
誰も居なくなったがらんとしたグラウンドの片隅で、バットを振り始める。
最初は一振り一振り、その一球を想定しながら丁寧に振っていたけど、辺りが暗くなり始めるとそれに比例するように雑になっていった。
50本を超える頃にはスイングの音も雑になった。
そこからはもう、適当乱暴ガサツもいいとこだった。
こんな無鉄砲なスイング、何千回やったって身にならない事は分かっている。
意味がないのだ。
でも、やめる事ができなかった。
体から何かを振り落したい。
このむしゃくしゃする、何かを。
その一心でがむしゃらに、頭が狂ったようにバットを振り続けた。
蒸し暑い空気を真っ二つにざくざく切り刻むように、一心不乱に振り続けた。
「すみませーん!」
その声にハッとした時にはもう完璧な夜になっていて、辺りは真っ暗になっていた。
「あのー! すみませーん!」
その声はライトの奥のフェンスの向こうから聞こえる。
女の声だった。
数名いるのが分かった。
「野球部の人ですかーっ?」