君に届くまで~夏空にかけた、夢~
「え……あの……」
何をどう返答すればいいのか分からず、突っ立っているおれに、大高はやっぱりへらへら笑った。
「あ、女の経験ない? あっ、ドーテー?」
と大高はおれの股間を指さして今度はげらげら笑った。
なんか、嫌なやつだ。
「じゃ。女の味占める前に教えといてやるよ。女の過去には要注意ね」
「かこって」
「そう、過去、現在、未来、の過去。これ、鉄則な」
じゃあね、そう言って、
「焼肉! 焼肉!」
大高は向こうで待ちくたびれていた女たちと絡み合うように戯れながら、あっと言う間におれの視界から消えた。
何だったんだ……。
ぽす、と帽子をかぶり、左手にバットを右手に縫い目がほつれた練習球を持ってとぼとぼ引き返す。
なんだか、猛烈にばかにされたような気がする。
首を傾げながら、
「童貞の何が悪い! 響也も健吾も童貞だ!」
どっしどっし歩いた。
「ああ、あれだ。どうせ、誉だって童貞だぜ!」
あんなちゃらちゃらした、下半身で生きてるようなやつに。
理由はどうであれ、野球から足を洗ったやつに、桜花球児のあっちい情熱が分かってたまるか。
どしどし、どしどし、歩く。
でも、待てよ、と立ち止まり振り向く。
月明かりが降っていた。
本当に、刑務所みたいだ。
高く張り巡らされたフェンス。
これをぽーんと飛び越えて来た、練習球。
大高。
何メートルもの高さを越えるボールを投げてきた。
きれいなフォームだった。
妙に彼の事が気になって、しばらく、フェンスを見つめ続けた。
ごおー。
自分の腹の音で我に返る。
……あがるか。
寮に帰ろうと部室に向かっている時に、そのただならぬ音が聞こえた。
ガシャーン。
「お……」
部室の窓から、煌々と明かりが漏れ出している。
工事現場で鉄パイプがぶつかるような音だった。
「何だ!」
何をどう返答すればいいのか分からず、突っ立っているおれに、大高はやっぱりへらへら笑った。
「あ、女の経験ない? あっ、ドーテー?」
と大高はおれの股間を指さして今度はげらげら笑った。
なんか、嫌なやつだ。
「じゃ。女の味占める前に教えといてやるよ。女の過去には要注意ね」
「かこって」
「そう、過去、現在、未来、の過去。これ、鉄則な」
じゃあね、そう言って、
「焼肉! 焼肉!」
大高は向こうで待ちくたびれていた女たちと絡み合うように戯れながら、あっと言う間におれの視界から消えた。
何だったんだ……。
ぽす、と帽子をかぶり、左手にバットを右手に縫い目がほつれた練習球を持ってとぼとぼ引き返す。
なんだか、猛烈にばかにされたような気がする。
首を傾げながら、
「童貞の何が悪い! 響也も健吾も童貞だ!」
どっしどっし歩いた。
「ああ、あれだ。どうせ、誉だって童貞だぜ!」
あんなちゃらちゃらした、下半身で生きてるようなやつに。
理由はどうであれ、野球から足を洗ったやつに、桜花球児のあっちい情熱が分かってたまるか。
どしどし、どしどし、歩く。
でも、待てよ、と立ち止まり振り向く。
月明かりが降っていた。
本当に、刑務所みたいだ。
高く張り巡らされたフェンス。
これをぽーんと飛び越えて来た、練習球。
大高。
何メートルもの高さを越えるボールを投げてきた。
きれいなフォームだった。
妙に彼の事が気になって、しばらく、フェンスを見つめ続けた。
ごおー。
自分の腹の音で我に返る。
……あがるか。
寮に帰ろうと部室に向かっている時に、そのただならぬ音が聞こえた。
ガシャーン。
「お……」
部室の窓から、煌々と明かりが漏れ出している。
工事現場で鉄パイプがぶつかるような音だった。
「何だ!」