砂漠の水車
終にはアルファも穴に走って行った。
「突然撃たれても知らないぞ…」
「主」
レインが家屋をじっと見つめながら、なんだか張りつめる冷たい声色をした。
「家の中にも、何者かいるようです」
「数はわかるか」
「一人でしょう。
物音がしましたが、多くありません」
「………」
「火薬や殺気立った様子はありませんが、どうします」
ジンは少し判断に困ったようである。
悩んで眉をひそめる仕草が、レインには非常に新鮮に思えた。
いつもなら放っておけとすぐに先を急ぐことであろうが、戦場の地獄を見て、もしくは暑さで頭が沸いてか、興味を示す緩みができているらしい。
ジンは家屋の方へ爪先を向けた。
レインもそれに続き、一応のこと、臨戦態勢をとるためにヴェールの中で拳銃を手に転がした。