砂漠の水車


ザクザクと、気だるそうなスローテンポで土を掻く音がする。


三人が穴の中を覗き込むと、腰の曲がった白髪の老人がスコップを手に穴を掘っていた。


穴は約5メートルにはのぼっており、きっと何日もかけて掘ったのであろうと思われる。


掻き出す土は、穴の出口には届かず、わずかに当たって底に戻った。



「おい、じいさん」



ヒツギは声を大きめにかけた。


老人では耳が遠いと思っていたからだ。


振り返った老人は肌が浅黒く顔の皮が重力に負けて垂れ下がっていた。


深く刻まれた皺の間から銀に光る髭が伸び放題。



腫れぼったい目を上に向けて、覗き込んでいる三人を見受けると、光のせいか、目を細めた。



アルファが穴の壁を伝って砂と共に落ちた。



「お爺さん、ここの街の人ですか?」



「……………」



「安心してください、僕は英国兵ではありません」



老人は、だらしない唇をパクパクさせて枯れた声を絞り出している。



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