砂漠の水車
アルファはちょうど手元に残しておいた水筒を老人に差し出した。
「飲んでください」
「あ、あ……あ」
「大丈夫。
僕らは一般人を殺すつもりはありませんし、水なら、僕ら困ってませんから」
「堂々と嘘つくな、この似非紳士め」
後ろで舌打ちするヒツギを睨み、それから、なお受け取ろうとしない老人の口に水筒の口をあてがった。
顎をつかみ、無理に流し込めば、それを吐き出す馬鹿な本能は無い。
「……っは、はっ…は……」
苦しそうな老人の咳に、やっと声が混ざる。
やれやれ、と水筒を引っ込めれば老人は生気を取り戻した顔をした。
穏やかで哀れな顔だ。
この自称紳士のフェミニストは意外に老人や男には容赦無い。
気を使う価値無し、または薄しと思えば、素で粗雑に扱って見せるまさに似非紳士。
「お爺さん、少し話を聞きたいんです」
にこやかな表情。
必殺スマイルも3ヶ月一緒にいれば影が見える。