砂漠の水車
「私は、掘らねばならない。
掘って水を湧かさねばならない」
「何故…。」
ヒツギは、この哀れな老人がどんな状態で穴を掘っているかなんとなく悟った。
きっとこの老人、何日も飲まず食わずだ。
干からびて皮だけがたゆむ貧弱な腕は、以前隊長に付き合って寄った病床の老父によく似ていた。
寝たきりで、口もきけない状態だった。
白いシーツにくるまれていた。
それがどういうことか、ここではスコップを持って干からびた大地に爪をたてている。
どこからそんな力が…。
「爺さん、アンタ、無謀とは思わねぇのか。
その根性の使い方間違ってるぜ」
「ハッハッハッ」
老人は朗らかに笑った。