砂漠の水車
まるで水車のように、延々と、ただ無意味に廻る。
それを俯瞰する獣たちは嘲笑いながら、しかしどこかで愛しく思いながら、腐った水車に弄ばれる水子たちを掬い取る。
ここでも同じだ。
「――…ひどいな」
鼻腔を貫く死臭を掻い潜りながら、黒いヴェールを頭から被った五人が廃墟となった街中を通り過ぎる。
ほんの、ついさっきまで戦場だったここには、役目を果たした物ばかりが散乱している。
バラバラになった、積木のような煉瓦。
破片しか残せなかった陶器や、ついさっきまで生きていた肉体。
地獄絵とはこういうのだろう。
そもそもここは仏教街ではないわけだが、元来仏様を拝んできたヒツギは、違和感なくそう思った。
「…ここには、もういないようだな」
『人気』の無い街の中を見回して、探し人がいないかと思うとえらく肩に重い物がのし掛かった。
自ら先頭を行く隊長は、敵も味方もない場所で息苦しいヴェールを外した。
漆黒の髪が、白い肌にぴたりと張り付いている。
四季折々に比較的恵まれた地方育ちの一同には、中東の猛暑は応えるらしく、目線がやや曖昧である。
立っているだけで汗が吹き出す状況というのは、身体にとっては初体験なのである。