砂漠の水車
人の身体の約七割は水でできている。
そんな学者の言うことを信じるか否かはともかくとして、ならば人を殺せば七割分の水を手に入れられるかと問われれば、そんな狂人紛いのことはできないだろう。
だからこの中東の戦場でも、七割の水分を持っていた人だったものが転がっていても、水が手に入るわけではない。
本当に水に困ったときだって、宗教に身を委ねる人間であれば同族の肉を貪ったりはしない。
人が人である限りは、奪うのではなく作らねばならない。
悪魔はきっと僕らを見下ろして嗤うだろう。
見ろ、赤い流動が滴っているぞ。
お前たちは何故それで喉をうるおさない。
それは否が応でも根付いてしまった「人を食ってはならない」という道徳観故にだ。