砂漠の水車
家屋は、羽目板で四方を囲って同じく木材で屋根を乗っけただけの簡素なつくりであった。
床は無く、黄銅色の砂の上に絨毯がひかれている。
窓はなく、羽目板の隙間から例の容赦ない陽光が所々に差しこんでいた。
板のつなぎ目が粗っぽい辺りを見ると、おそらく知識の無い素人考えで造られた小屋であろうことが予想される。
それでも日の光を遮るには十分そうだし、こんな頑丈な木材はどこで拾ってきたろうかと不思議に思う。
簾で塞いだ入口を押しあけて、薄暗い小屋の中に入って行くと、四畳半くらいの小屋の奥には人影が一つあった。
いかにもこの地域で紡がれたらしい鮮やかな模様のヴェールを頭から被り、その隙間から浅黒い肌が覗いて見える。
「女性ですね。
敵ではないようですが」
素早い考察。
ジンはその判断に応じて軽く頷くと、絨毯を避けて砂が剥き出しになった壁際を歩き、顔を膝の間に埋めたままの女性の傍まで行った。
「失礼だが、英語は話せるか」