砂漠の水車
女性は顔を上げた。
血走った大きな瞳が、ジンを見上げてぎょっと見開かれる。
「ご安心ください、私たちは英国兵ではありませんから、あなたに危害を加えるようなことはありません」
女性はしばらく金魚のようにパクパクと口を動かしていた。
頬がこけ、顎と鼻が異様に鋭くなって一見醜く見えるが、しかしきちんとした栄養をとれば、元は美人なのであろう。
酒屋でも開けば、すぐに常連の酔っ払いができるに違いないほどに。
だがしかし戦場の真っただ中で生まれてしまったのが不幸だった。
「………」
女性はまだ口をパクパクさせたまま。
レインとジンは互いに顔を見合わせ、頸を横に振る。
「英語は通じないらしいな」
「ええ、そうですね。
先を急ぎますか」
「ああ」