砂漠の水車
老人は項垂れた。
それは娘を想う父親の顔であり、またやりきれないという口惜しい感情を押し殺していて。
その一言で三人は息を呑んだ。
嫌悪が腹の中を駆け巡って吐き気がする。
「…どうして」
「そんなもん、わかるもんかい、否、解りたくもないがね」
老人は自嘲気味に笑う。
スコップを地面に突き刺して、まるで地獄を臨むような険しい感情を瞳に宿していた。
「…戦争中の兵隊は、長い期間の禁欲生活なんだ」
グレンが言うのは老人の代弁だ。
彼もまた軍に在籍していた経験があり、その頃はまだ未成年で疎かったからわからないものであったが、周りの大人たちのおぞましい自慰行為を否が応でも見せられてきた。
「欲求不満を解決させるために、軍は時に現地の女を攫う。
たくさん連れ帰って男の中に放り込んで、あとはやりたいだけ好きにされて閉じ込められて、妊娠したら殺される」
「………ひでえ」
「実際にあった話だ」
「そうさ、ミーナも同じ目にあった。
幸いわこのわしが連れ戻すことができたがね」