砂漠の水車



「ミーナはこのあたりでも特別美しかった。

だから軍の大佐、ハザリー・モランという大佐にいっそう気に入られ、そいつの相手ばかりを努めていたのだ。

ミーナはまだ若く、疎かった。

抱かれるうちに『愛されている』と勘違いしてしまったのだ」



「連れ戻すときに抵抗したでしょうね」


「ああ…自分は大佐の傍に、旦那様の傍にいると言って聞かなかった。
可哀そうに、妊娠すれば容赦なく殺されるのをあの子は知らないんだ」



無知で無垢な物ほど、愚かで清らかな存在は無い。


まるで旧約聖書のイヴの如く、世界にある物全てが善であると思い込んでいたであろう。


残忍な蛇というのは、それを騙すだけでなくぶち壊すこともまた快感と捕える。


騙して犯して、また裏切って容赦なく銃口を向けて絶望に浸った女性の顔を見るのも一種楽しかろう。






そこまで外道にならなければ、戦争において『駒』にはなれないのだ。




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