砂漠の水車
「…ほんと、君は子どもが大嫌いなんですね」
なにを今さら、そう言い掛けて、アルファが揺りかごの中の赤ん坊を優しく抱き上げて見せた。
ああ、その行為に吐き気がして、俺は無意識に表情を曇らせ歯ぎしりをしていた。
「ほら、憎いんですね」
「お前馬鹿か、俺が今日会ったばかりの一歳未満の赤子に憎しみを抱くほど理不尽な人間だと思ってたわけ、俺の『右腕』を名乗って副隊長になった男が笑わせる」
「そうやってつらつら罵倒が出てくるからそう思うんですよ、『まさか、そんなわけ無いだろ』の一言で済まさず、無駄を嫌う君が明らかに無駄な指摘をつらつら語り、どうせ放っておけば死んでくれる赤ん坊をわざわざ切り殺そうとするのが」
「………なにを言っている、アル」
気紛れなんてよく起こすことだろう。
気が向いたからって、今まで無意味に殺したり殺さなかったりした人間なんて大勢いる。
今日だって同じで、わざわざ手にかけたい日なんだ。
「いいえ、君は徹底して子どもという立場の人間が嫌いなんだ」
「…だったらどうした、俺だって人だ」
好き嫌いはある。
あって良い筈だろ、だって。
だって――…。
「ジンくん」