砂漠の水車


一同は取り敢えず、日陰が残る廃墟に入り込み、消耗した体力分涼むことにした。


もっとも、こんな環境では風が吹き込んだって少しも涼しくはないのだが、日に当たりっぱなしよりはいいだろう。



まるで身を隠すかのようで些か違和感が残る。



「……げっ」


「どうした?」



西洋人たる一同には見慣れない竹の筒をひっくり返して、ヒツギは深く溜息を漏らした。



「水がねえ」


「あーあー」


砂漠に行くのに必要不可欠品。


水分補給の源が、まだ任務達成前に飲み干されてしまったのである。



「…考えも無しに、飲むからだ」


「ああっ!?
うるせえよグレン、ばあか!」


「…お前が煩い、頭に響くだろ、大声出すな」


「お前がうだうだ言うからだろこの根暗野郎っ!!」


「…黙れ、その赤髪、見てるだけで暑くなる」


「俺の所為にしてんじゃねえ!」


「はいはい、やめましょう二人とも。
気が立ってるのは解りますけど、倒れられたっておんぶして持ち帰ってなんてあげませんからね」



ほんとに置いて行かれそうなのを想像したか、口喧嘩に興じた二名は黙ってお互いそっぽを向いた。



これでも五人の中では年長組に値する。



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