砂漠の水車
燃え上がる屋敷を見上げながら、アルファは口惜しそうに両手を結んでいた。
人でなしと罵倒したって、非情だなんて非難したって結局こいつは俺についてくる。
それは彼なりの贖罪であり勝手に義務付けて抱え込んだ使命だからだそうだ。
「いつもそうです、僕もほとほと馬鹿なようで」
「今更気付いたのか」
「ええ。
…情に訴えたって君は靡いてくれない、そんなことは小さい頃から解ってました、否、解っていたつもりだったんですが」
悲しそうな目をして、アルファは血で濡れた自身の着物を見詰めた。
両手にまでべっとり付いた、『結局救えなかった』子供の血。
「いつか通じてくれるって幻想がどうしても捨てられませんね、君がそういうの大嫌いだって知ってるのに」
人間臭さが嫌い。
人っていうのは惨めで嫌い。
ああだから、目の前に吸血鬼が現れるなら、俺は進んで頸を差しだそう。
『非情になりたい』。
「でも僕らといる君を見ている限り、どうしてもいつか通じてくれるって気がするんです…ああ、本当に僕は馬鹿だ」