砂漠の水車

アルファは、何故か持参していた紙とインクでこの村の詳しい状況や位置を書き留めた。


すぐにヒツギが突っ掛かる。


｢んなもん、どうすんだよ｣


｢届けてもらいます｣



アルファはにっこり笑い、指を口に突っ込むとピュイッと高めの指笛を鳴らした。


暫くすると、上空からなにか黒い影が陽光に照らされながら旋回して降りてくる。



｢ぎょああああっ!!｣


突如アルファの腕に舞い降りたその影の正体を認めて、ヒツギは飛び退いてグレンの背中に隠れた。



禿げ鷲だ。



｢ああ、そう言えばヒツギは鳥が苦手でしたね｣


ニヨニヨするこの紳士、確実に確信犯に違いない。



｢アル、どこで手懐けてきた…｣


｢しっつれいな、昨日英軍基地に迷いこんで、餌をあげたら仲良くなったんですよ｣


｢…そういうのを、餌付け、っていうんだ｣


どこに禿げ鷲を手懐ける餌が、という疑問はさておいて。



獰猛そうな禿げ鷲はアルファの右腕にすっかり落ち着いて、まさかこのままお持ち帰りされるんじゃないだろうか。