砂漠の水車
アルファは禿げ鷲の足に器用に手紙を巻き付けてまた空の彼方へ飛ばした。
「これでよし」
満足げに腕を組んで胸を張り、手懐けた禿げ鷲が飛び去る跡を見送っていた。
鳥の扱いに関しては帝国一の使い手であろうから、無事に手紙が帝国援助隊に届くかというのはさして問題ではない。
禿げ鷲の足にくくりつけた手紙を、一体誰が取り上げるかという問題。
普通、猛禽が大人しくて手紙を持っていたって、その嘴と爪が怖くてなかなか近づけないもんだろうが。
「それじゃ、先を急ぎましょうか」
「おう」
「…………」
一段と張り切っている、ここの副隊長はやたらと顔色が悪い。
どうした――…なんて聞かなくともわかる。
穴堀親子のために、自分の水を父親に譲ってしまったのだ。
「…アル、少し休まなくて平気なのか」
ほら、日陰なら、まだ村の中だからいくらでもあるぞ、と言ってもアルファはなおめも首を縦に振らない。
強情な奴――…意外と頑丈な体つきのかも知れないが。