砂漠の水車



「いつでも止めて構わないんだぞ」


「……なんですか、唐突に」


「………だって」




だって苦しいだろう。


アルファは元来優しい人柄であり、好んで汚い仕事をする残忍さは欠片もないし惨劇を真顔で見過ごせる質でもなかった。


むしろ人を助けたり、喜ばせたりして楽しく笑ってるのが好きな男だ。



そんな優男を『ここ』へ引き込んだのは間違いなく自分が引き金である。


それはあまりにも酷で。



本人は意地でも君の傍にいるだなんて兄貴面して言うけれど、でも内心辛かろうことは明白。



だから騎士団に残るにしても隊を換えてもらうなり事務に行くなり、とにかく惨劇の現場に居合わせるのを強要するようなことを避けたく思った。



「そうやって見かける度に人助けに徹されても足手まといで困るからな」


「ああ、そーですか…」




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