砂漠の水車


アルファ、グレン、ヒツギの三名は、二人と別れると街を囲む外壁から出た。


外壁は、おそらく砂嵐を避けるためのものだろうが、今はどこの街でも防護用と化している。


そもそもの作りが甘いので、弾丸を前にすれば脆い。



「ひとまず見張りを見つけましょうか」


基地があるということは、必ず外の見張り番がいなければならないわけで、つまりはそれが入り口の印になる。



「僕とヒツギが右から行きますから、グレンは左から」


グレンは黙って頷いた。


「俺ひとりでいいよっ」


「君は単独禁止、そのために僕がこっちに回されたんですからねっ、本当はジンくんたちと一緒に行くのが常でありながら君が前に厄介なこと起こすからっ」


「だーっ、まだ引きずってんのかよっ、もう忘れてくれたっていいじゃんか!」


「記憶能力は人が神にもたらされた才だと思いませんか…」



そんな、キメ顔で言われたって呆れるばかりである。


記憶能力が神にもたらされた才だと言うのなら、忘却能力もまたそう言える。


都合の良いことばかりを頭に入れておく便利な機能とは思うが、それ故に人が保持したがる記憶の類は異なり、忘却を望んだ記憶を思い出させられる度に眉間に皺を寄せる。



ヒツギもまたそれであり。


前回の仕事で勝手に暴れて帝国警視庁の邪魔をしたというペナルティが課されていた。






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