砂漠の水車
そもそも彼の隊がこれで全員というのだから、一応これでも十分精鋭と呼べる。
大した仕事ではないな、と思いつつも五人全員でこの中東の猛暑に乗り込んだのは、戦場たる此処で、どれほど大規模な敵軍に出くわすか予測不可能だったからだ。
ジンが空身だったならきっと難なく切り抜けられるだろう。
ところが、敵軍に捕虜にされてしまったらしい帝国軍の大佐を救出し取れ戻せ、というのが第一命令である以上、お荷物を抱えなければならなくなる。
大佐を殺さずに連れて帰れる自信が無かった。
「主、どうなさいますか。
ここの街からも退いているということは、ノシャックの付近まで行かねばならなくなります」
「…行くしかないだろう。
おいヒツギ、あの山は喜ばしいことに登頂は雪に覆われてるぞ」
「喜ぶかっ。
山登りの趣味と根性はねえよ!」
「ふん」
レインはヴェールの内側から英軍から貰い受けた地図を取り出して、乾いた土の上に広げた。
「ええと…現在地がこのあたりですから…」
「…お、おいレイン、お前見てる方向が南北逆だ。」
「そして現在地も違います」
「……………」
「ついに頭が湧いたのかよ、レイン」
「言ってやるな、方向音痴と地図読めないのは元々だ」
フォローどころか留めになっているのが、おそらく悪気はなかろう、笑われはしなかった。