砂漠の水車
地図を読むのをグレンにバトンタッチして、現在の正確な位置情報を取得した。
スマホでなくてもできる素晴らしい人の測定能力。
「…あと30キロ先、そう辛い距離じゃない」
「つれえよ馬鹿!
30キロだと、そんなに歩けるかあっ!」
ヒツギはがあがあ喚いて空を仰いだ。
生物がいないと思っていたこの広い土地に、禿鷹が一羽、上空を旋回している。
そうか、彼らからすればここは御馳走の山であろう。
「…ここまでのペースで考えても、遅くても明日には到着できる。
いったん引き返すよりは、進んだ方がいいと思う」
「同感ですね。
早く国に帰りたいところですし、捕虜とはいえどあまり時間がかかれば大佐の命が心配ですからね」
もしくは、もう既に殺されている可能性だってあるわけだが、できるだけお咎めは避けるべき。
「なーんでたかが軍の大佐一人のために、騎士団が動かなきゃならねえのかね」
「仕方ありませんよ。
他に相応しい部隊が無かったらしいですから、陛下によれば」
「それに大佐は陛下の縁者だ」
ジンは些か呆れた風に言った。
そういう身内事情を聞くのは大嫌いなのだ。
「大佐は陛下が軍に干渉できる大切なパイプ役、安易に見捨てたりできないんだよ」
「け」