砂漠の水車




「……『見ろ、人が死んでる』」



低く落ち込んだ声で、ジンは誰にともなく呟いた。




「普通、そう言われたらどうするものかな」


「…警察に通報するなり、人を呼ぶなり、もしくは土に埋めて供養したりするでしょう」


「それは戦場でもそうなのか」




彼女に問う、ジンの瞳は見たことがないくらい無邪気で無為なものであった。


ただ、頭に浮かんだ疑問をそのまま口にしてみただけなのに、乾いて掠れた彼の声は何故か子供が泣きだしそうなほど悲愴な色がある。




「戦場なら、人は山積みにされて焼かれるでしょう」



それは弔うためではない。


単に、死者が残した物は邪魔であり、不快で、醜悪だからだ。


だから焼いて捨てるのがいいんだ。




「ああ、そうだよな」


「主…?」




やっと、いつもの彼らしい嘲笑ったような声色が戻ってきた。


なんて馬鹿なことを問うたのだろう、そう後悔するように、ヴェールの中で黒髪をくしゃくしゃと掻き回した。




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