アカイトリ
朱と碧の対峙
屋根から降り立った二人を見て…
いや、一人を見て、居合わせた使用人全てが立ち尽くした。
天花が楓の腕に抱かれ、白い浴衣をかけられ、颯太の前まで連れられて行く。
「…いつになったら解放するんだ」
「お前をか?…まぁ、しばらくないと思ってゆっくりしろ」
本人は低く呟いたつもりだろうが、天花の声色に誰もがぞくりと身を震わせる。
朱い鳥の声は魅了の声――
人に変わったとしても、それは変わらない。
さらさら、と流れ落ちる髪を梳くって颯太は口づけをする。
「天花、碧も良い香りと歌声で始祖を虜にした」
怪訝そうに眉を潜めた天花の頬に今度は手の甲で触れる。
「俺はまだ歌声を聞いたことはないが・・・近いうちに俺のために歌ってくれ」
…
……碧が、人のために歌った…?
――我々の歌は、求愛行動。
雄と雌が互いの翼を広げ合い、重ね合ってつがいとなる。
無理矢理には、決して歌わない。
しかも、一度つがいとなれば死んでも離れないのだ。
悲しくて、残された方が恋焦がれて死んでしまうほどに…
神に呪われしこの身が、滅ぶ方法。
――朱い同朋がもし居なかった場合、狩られて死ぬか、否かの二択。
「部屋へ運びます」
楓が声を発したので天花は彼を見上げた。
何事か颯太と言葉を交わし、歩き出した楓に小さく天花は話しかけた。
「雄の瞳だ」
「…なに?」
「あの男と話している時のお前は、雌を見ている時の雄の瞳だ」
的確に言い当てられ、楓は取り乱してしまいそうな心を必死に理性で縛ると、いち早く主の前から離れるために早足で歩き出す。
「馬鹿なことを言うな。…殺すぞ」
主に憎まれたとしても…
主をこの鳥に絶対に奪われたりは、しない―――
いや、一人を見て、居合わせた使用人全てが立ち尽くした。
天花が楓の腕に抱かれ、白い浴衣をかけられ、颯太の前まで連れられて行く。
「…いつになったら解放するんだ」
「お前をか?…まぁ、しばらくないと思ってゆっくりしろ」
本人は低く呟いたつもりだろうが、天花の声色に誰もがぞくりと身を震わせる。
朱い鳥の声は魅了の声――
人に変わったとしても、それは変わらない。
さらさら、と流れ落ちる髪を梳くって颯太は口づけをする。
「天花、碧も良い香りと歌声で始祖を虜にした」
怪訝そうに眉を潜めた天花の頬に今度は手の甲で触れる。
「俺はまだ歌声を聞いたことはないが・・・近いうちに俺のために歌ってくれ」
…
……碧が、人のために歌った…?
――我々の歌は、求愛行動。
雄と雌が互いの翼を広げ合い、重ね合ってつがいとなる。
無理矢理には、決して歌わない。
しかも、一度つがいとなれば死んでも離れないのだ。
悲しくて、残された方が恋焦がれて死んでしまうほどに…
神に呪われしこの身が、滅ぶ方法。
――朱い同朋がもし居なかった場合、狩られて死ぬか、否かの二択。
「部屋へ運びます」
楓が声を発したので天花は彼を見上げた。
何事か颯太と言葉を交わし、歩き出した楓に小さく天花は話しかけた。
「雄の瞳だ」
「…なに?」
「あの男と話している時のお前は、雌を見ている時の雄の瞳だ」
的確に言い当てられ、楓は取り乱してしまいそうな心を必死に理性で縛ると、いち早く主の前から離れるために早足で歩き出す。
「馬鹿なことを言うな。…殺すぞ」
主に憎まれたとしても…
主をこの鳥に絶対に奪われたりは、しない―――