アカイトリ
“それ”は



まどろみから目覚めた。



ずっと昔に


自ら眠りについたこの楽園で



あれは夢だったのかと



自分も



夢を見ることがあるのかと



まどろみから目覚め



その手で造った『天球』 の方へ視線をやった。



「葵(あおい)…」



ただひとり

愛したその名を呼ぶ。



私は



裏切られた。



結末を

じわりと“それ”は記憶から拾い上げた。



許さない。



碧い鳥よ



「葵…」



ただひとり

愛したその名を呼ぶ。



楽園に独り



神――


金の髪を持ち

藍色の瞳を持った男――



皇(こう)は立ち尽くす――
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