アカイトリ
「颯太様!私は…反対です!」
断固たる口調で凪を全否定する楓が勢いよく立ち上がった。
上背があるため、凪も颯太も首が痛くなりそうになりながら見上げた。
「楓…」
「この男はあなたの命を奪おうとしたのです!幸いにも助かりはしましたが…でも、許せない…!」
楓の握った拳に力が入りすぎて小刻みに触れる様をしばし凪は見つめた後、頷いた。
「まっ、そらそうだな。俺はあそこで特別不自由してねえし。それにお前の命を絶とうとしたことも真実だしな」
後悔している――
――凪の表情にはその色が如実に現れている。
それを見逃す楓ではなく、まるで自分が欲しいものを目の前にして駄々をこねる子供のようになっている気がして、再び膝を折った。
「…申し訳、ありません。出過ぎたまねを…」
「いいんだ楓。だが少し俺の言い分も聞いてくれないか?」
静かな呼び掛けに、凪も楓も姿勢を正した。
少し伸びた後ろ髪を革紐で縛った颯太の横顔が、息を呑む程に美しい。
「残り短い時間を有効に使うためには、朱、黒の助けが要るんだ。それは分かるな?」
「…はい」
人差し指で「こっちへ来い」と合図されると、颯太の真横で座り直した。
颯太はその楓の肩に優しく手を置いた。
慈愛の温もり。
「そう簡単に彼らの呪詛が解けるとは思えん。だから長い間飛び続け、さ迷い続けているんだ。何ら価値を見出ださず、自身の生きる意味を見出ださず」
反対側の真横に座っている凪の手と、そして楓の手を颯太は握った。
「団結の時だ。凪にはここに住んでもらう。そして可能な限り、情報を譲ってもらいたい」
「おう、任せろ」
「…仰せのままに」
深く頭を垂れた楓の頭を颯太がぽんぽんと叩くと、凪が再び寝転んだ。
「では礼にお前の警護をしてやる。命を狙う、全てを排除してやる」
その凪に、颯太は軽く微笑んで楓を見ながら言った。
「いや、俺には楓がいるから大丈夫だ。凪、もちろんお前のことも信頼している」
――全幅の信頼。
凪と楓は同じ決心をしつつ、だが目が合うと、ぷいっと顔を反らした。
「本当に犬猿の仲だな」
颯太は笑った。
断固たる口調で凪を全否定する楓が勢いよく立ち上がった。
上背があるため、凪も颯太も首が痛くなりそうになりながら見上げた。
「楓…」
「この男はあなたの命を奪おうとしたのです!幸いにも助かりはしましたが…でも、許せない…!」
楓の握った拳に力が入りすぎて小刻みに触れる様をしばし凪は見つめた後、頷いた。
「まっ、そらそうだな。俺はあそこで特別不自由してねえし。それにお前の命を絶とうとしたことも真実だしな」
後悔している――
――凪の表情にはその色が如実に現れている。
それを見逃す楓ではなく、まるで自分が欲しいものを目の前にして駄々をこねる子供のようになっている気がして、再び膝を折った。
「…申し訳、ありません。出過ぎたまねを…」
「いいんだ楓。だが少し俺の言い分も聞いてくれないか?」
静かな呼び掛けに、凪も楓も姿勢を正した。
少し伸びた後ろ髪を革紐で縛った颯太の横顔が、息を呑む程に美しい。
「残り短い時間を有効に使うためには、朱、黒の助けが要るんだ。それは分かるな?」
「…はい」
人差し指で「こっちへ来い」と合図されると、颯太の真横で座り直した。
颯太はその楓の肩に優しく手を置いた。
慈愛の温もり。
「そう簡単に彼らの呪詛が解けるとは思えん。だから長い間飛び続け、さ迷い続けているんだ。何ら価値を見出ださず、自身の生きる意味を見出ださず」
反対側の真横に座っている凪の手と、そして楓の手を颯太は握った。
「団結の時だ。凪にはここに住んでもらう。そして可能な限り、情報を譲ってもらいたい」
「おう、任せろ」
「…仰せのままに」
深く頭を垂れた楓の頭を颯太がぽんぽんと叩くと、凪が再び寝転んだ。
「では礼にお前の警護をしてやる。命を狙う、全てを排除してやる」
その凪に、颯太は軽く微笑んで楓を見ながら言った。
「いや、俺には楓がいるから大丈夫だ。凪、もちろんお前のことも信頼している」
――全幅の信頼。
凪と楓は同じ決心をしつつ、だが目が合うと、ぷいっと顔を反らした。
「本当に犬猿の仲だな」
颯太は笑った。