アカイトリ
手早く颯太も着替えを終え、凪と楓が引いてきた馬に乗って天花に手を差し出した。
「乗れるか?」
「ああ」
颯太の手を取り、ひらりと無重力の動作で颯太の前に乗った。
すぐ背中には颯太のあたたかい身体に、前には手綱を引く手と、身体に回された手。
「はじめて乗ったにしてはうまいな」
「いや…はじめてでは…。お前が死にそうな時に無我夢中でなんとか乗ったことがあるだけだ」
――そう消え入るような声で呟くと、凪が馬の腹を蹴って先駆ける。
「先を見てくる。お前に似たこの香りの先を行けばいいんだろ?狂犬は傍に居ろ」
憮然となる楓を見て颯太がゆっくり馬を前進させながら笑った。
「あいつ、すでにいっぱしの仲間だな。楓、行こう」
走り出した馬に揺られ、天花はただ颯太に包み込まれる感覚が心地良く、瞳を閉じる。
幸福のままに逝った碧い鳥。
同じ末路を歩もうとしている颯太の魂…
死神…もとい、神から取り戻さなくては――…
――しばらく駆けた後、どこまでも続く塀を歩き、正門の前で馬を降りて門番と口論をしている凪を発見した。
「ぜんっぜん話聞いてくんねーよ」
「うちは警備が固いからな」
そう言った颯太の顔を見て、古参の門番である男が慌てて膝を折る。
「これは颯太様でしたか。失礼いたしました、こ奴があまりにも胡散臭いので…」
「いいんだ。元気にしているようだな。これは俺の友だ。中に入れてやってくれないか」
ぎい、と音を立てて開く門を前に、凪はくすぐったそうな顔をして頬をかいた。
「友…か」
「何だ?嫌か?」
「…んーや、早く入ろうぜ」
はじめて友と呼ばれた…
――中へ入ると、天花が西の方へ視線をやる。
ぎゅっとその身体を颯太が抱きしめた。
「わかるか?そっちに碧の霊廟がある。まずは親父殿と会ってくれ」
馬を降り、天花を下ろすと近くの部屋から楓の父の疾風が現れた。
「今日来ることは存じておりました。どうぞ中へ」
一族きっての血の濃さを持った隼人。
一族きっての血の薄さを持った颯太。
共に同じ時代に現れた黒と朱。
全ての元凶となった場所に今、立つ――
「乗れるか?」
「ああ」
颯太の手を取り、ひらりと無重力の動作で颯太の前に乗った。
すぐ背中には颯太のあたたかい身体に、前には手綱を引く手と、身体に回された手。
「はじめて乗ったにしてはうまいな」
「いや…はじめてでは…。お前が死にそうな時に無我夢中でなんとか乗ったことがあるだけだ」
――そう消え入るような声で呟くと、凪が馬の腹を蹴って先駆ける。
「先を見てくる。お前に似たこの香りの先を行けばいいんだろ?狂犬は傍に居ろ」
憮然となる楓を見て颯太がゆっくり馬を前進させながら笑った。
「あいつ、すでにいっぱしの仲間だな。楓、行こう」
走り出した馬に揺られ、天花はただ颯太に包み込まれる感覚が心地良く、瞳を閉じる。
幸福のままに逝った碧い鳥。
同じ末路を歩もうとしている颯太の魂…
死神…もとい、神から取り戻さなくては――…
――しばらく駆けた後、どこまでも続く塀を歩き、正門の前で馬を降りて門番と口論をしている凪を発見した。
「ぜんっぜん話聞いてくんねーよ」
「うちは警備が固いからな」
そう言った颯太の顔を見て、古参の門番である男が慌てて膝を折る。
「これは颯太様でしたか。失礼いたしました、こ奴があまりにも胡散臭いので…」
「いいんだ。元気にしているようだな。これは俺の友だ。中に入れてやってくれないか」
ぎい、と音を立てて開く門を前に、凪はくすぐったそうな顔をして頬をかいた。
「友…か」
「何だ?嫌か?」
「…んーや、早く入ろうぜ」
はじめて友と呼ばれた…
――中へ入ると、天花が西の方へ視線をやる。
ぎゅっとその身体を颯太が抱きしめた。
「わかるか?そっちに碧の霊廟がある。まずは親父殿と会ってくれ」
馬を降り、天花を下ろすと近くの部屋から楓の父の疾風が現れた。
「今日来ることは存じておりました。どうぞ中へ」
一族きっての血の濃さを持った隼人。
一族きっての血の薄さを持った颯太。
共に同じ時代に現れた黒と朱。
全ての元凶となった場所に今、立つ――