アカイトリ
「碧は…碧に関しての文献は残されていないのか?」
二人分の夕餉を楓が運んで来た時、はじめて天花が碧に関することを颯太に尋ねた。
楓は邪魔にならない位置に座り、颯太の影に徹する。
ろうそくの光に照らされている天花の横顔は、どこまでも妖艶だ。
颯太は天花の隣に座り、箸の持ち方を教えていた。
「ああ、残っているぞ。ぼろぼろで欠損している箇所もあるが、碧自身が書いたと言われる書物がある」
「見せてくれ」
底意地の悪い笑みを浮かべて天花に箸を握らせる。
「まずは食え。腹が減ったろ?捕らえられてから何も食ってないだろ」
「人の食い物など口に合うものか。我々は食さずとも生きてゆける」
「だが食って害はないのなら食え。鳥は出してないから安心しろ」
何気に失礼なことを言いつつ、自らの膳に手をつけた。
天花はそれをじっと見る。
「…碧が…歌ったと言ったな?」
「ああ、そのように書かれていたな」
「碧は…どうやって死んだんだ?」
箸を颯太は止めて質問し続ける天花を見た。
朱い瞳の中にろうそくの炎がちらちらと光っている。
「先に死んだ始祖を追いかけるように死んだそうだ」
…やはり。
碧は、自ら捕まったのだろう。
この男の始祖を愛してしまったが故に。
「わたしは碧の一族に会ったことはないが・・・」
すぐ横に座ってこちらを穴が開く程に見つめている颯太の両頬を両手で包み込んだ。
「お前の藍色の瞳を通じて、碧がわたしに呼びかけてくる」
「…何と?」
今度は颯太が挟み込むように天花の両手を両手で包み込む。
「人を、愛していた、と…」
故に楽園から追放され、神の罰を全ての色の鳥が受けた。
「…碧い鳥の名残を見せてやる」
颯太は紺色の浴衣から腕を抜くと、上半身裸になる。
「これを見ろ」
天花は“それ”を見て、言葉を失った。
二人分の夕餉を楓が運んで来た時、はじめて天花が碧に関することを颯太に尋ねた。
楓は邪魔にならない位置に座り、颯太の影に徹する。
ろうそくの光に照らされている天花の横顔は、どこまでも妖艶だ。
颯太は天花の隣に座り、箸の持ち方を教えていた。
「ああ、残っているぞ。ぼろぼろで欠損している箇所もあるが、碧自身が書いたと言われる書物がある」
「見せてくれ」
底意地の悪い笑みを浮かべて天花に箸を握らせる。
「まずは食え。腹が減ったろ?捕らえられてから何も食ってないだろ」
「人の食い物など口に合うものか。我々は食さずとも生きてゆける」
「だが食って害はないのなら食え。鳥は出してないから安心しろ」
何気に失礼なことを言いつつ、自らの膳に手をつけた。
天花はそれをじっと見る。
「…碧が…歌ったと言ったな?」
「ああ、そのように書かれていたな」
「碧は…どうやって死んだんだ?」
箸を颯太は止めて質問し続ける天花を見た。
朱い瞳の中にろうそくの炎がちらちらと光っている。
「先に死んだ始祖を追いかけるように死んだそうだ」
…やはり。
碧は、自ら捕まったのだろう。
この男の始祖を愛してしまったが故に。
「わたしは碧の一族に会ったことはないが・・・」
すぐ横に座ってこちらを穴が開く程に見つめている颯太の両頬を両手で包み込んだ。
「お前の藍色の瞳を通じて、碧がわたしに呼びかけてくる」
「…何と?」
今度は颯太が挟み込むように天花の両手を両手で包み込む。
「人を、愛していた、と…」
故に楽園から追放され、神の罰を全ての色の鳥が受けた。
「…碧い鳥の名残を見せてやる」
颯太は紺色の浴衣から腕を抜くと、上半身裸になる。
「これを見ろ」
天花は“それ”を見て、言葉を失った。