アカイトリ
「疾風、久しぶりだな。元気だったか?」
隼人のいる部屋までの道を歩みながら颯太は長年父に仕えている疾風に話しかけた。
「はい。颯太様もお変わりなく。こたびの出来事は心配申し上げましたよ」
疾風が肩越しにちらりと凪を盗み見ると、凪はぷいと目を逸らした。
「親父殿はまだ若い。旅先で羽目を外したりしなかったか?」
「ははっ、ご兄弟ができるようなことはございませんよ。ご注意されているので」
「つまりそれなりに遊んではいるということだな。まだ若いんだから再婚すればいいのに。…そうすれば、安心できるのに」
――限りなく声を抑えて呟いたのに、天花が唇を結んで俯いた。
「こちらの部屋におられます。私と楓は席を外しますのでごゆるりと…」
楓が何か言いかけたが思い止まって去って行くと、颯太は障子を開けた。
広い部屋の奥中央に隼人が座して待ち受けていた。
「よく来たな」
魅了の声。
天花も凪も、何かを呼び覚まされたかのように隼人を見つめた。
色濃く、藍色の髪と瞳を持つ美貌の男。
「入りなさい」
言われ、まるで引き寄せられるように隼人の前で座る。
颯太は隼人の隣に座り、この段階で、見つかっている全ての神の鳥が相見えた。
「私が碧い鳥の一族であり現当主の隼人だ。…天花とは会っているな」
隼人の優しい笑みに、人見知りするように天花が俯き、凪は不思議な面持ちで隼人を凝視していた。
「黒い鳥か。出会いは最悪だったが、よく我々の前に現れてくれた」
「…」
責められてはいないが卑屈な心が先に立って話せないでいると、颯太と目が合い、やわらかい色を瞳に浮かばせると先を促した。
急にそれで気持ちが楽になり、凪ははじめて――人に頭を下げた。
「すまん。颯太を傷つけたのは俺だ。同朋に手をかけるなどあってはならんことだった」
目を丸くする天花。
優しく微笑む颯太。
ただそれを見守る隼人。
「そうか。過ちだったと認識できているならば問題ない。それより」
この出会いに感謝しなければ。
「霊廟へ行こう。この日を待っていた」
始祖と碧い鳥の魂が在る場所へ――
隼人のいる部屋までの道を歩みながら颯太は長年父に仕えている疾風に話しかけた。
「はい。颯太様もお変わりなく。こたびの出来事は心配申し上げましたよ」
疾風が肩越しにちらりと凪を盗み見ると、凪はぷいと目を逸らした。
「親父殿はまだ若い。旅先で羽目を外したりしなかったか?」
「ははっ、ご兄弟ができるようなことはございませんよ。ご注意されているので」
「つまりそれなりに遊んではいるということだな。まだ若いんだから再婚すればいいのに。…そうすれば、安心できるのに」
――限りなく声を抑えて呟いたのに、天花が唇を結んで俯いた。
「こちらの部屋におられます。私と楓は席を外しますのでごゆるりと…」
楓が何か言いかけたが思い止まって去って行くと、颯太は障子を開けた。
広い部屋の奥中央に隼人が座して待ち受けていた。
「よく来たな」
魅了の声。
天花も凪も、何かを呼び覚まされたかのように隼人を見つめた。
色濃く、藍色の髪と瞳を持つ美貌の男。
「入りなさい」
言われ、まるで引き寄せられるように隼人の前で座る。
颯太は隼人の隣に座り、この段階で、見つかっている全ての神の鳥が相見えた。
「私が碧い鳥の一族であり現当主の隼人だ。…天花とは会っているな」
隼人の優しい笑みに、人見知りするように天花が俯き、凪は不思議な面持ちで隼人を凝視していた。
「黒い鳥か。出会いは最悪だったが、よく我々の前に現れてくれた」
「…」
責められてはいないが卑屈な心が先に立って話せないでいると、颯太と目が合い、やわらかい色を瞳に浮かばせると先を促した。
急にそれで気持ちが楽になり、凪ははじめて――人に頭を下げた。
「すまん。颯太を傷つけたのは俺だ。同朋に手をかけるなどあってはならんことだった」
目を丸くする天花。
優しく微笑む颯太。
ただそれを見守る隼人。
「そうか。過ちだったと認識できているならば問題ない。それより」
この出会いに感謝しなければ。
「霊廟へ行こう。この日を待っていた」
始祖と碧い鳥の魂が在る場所へ――