アカイトリ
颯太の視界には入らずとも、常にこちらから見える位置に控えている楓は天花の部屋を見つめていた。
「健気だねえ」
それをさらに屋根の上から凪が観察しつつ茶々を入れる。
楓は厳戒にまで鍛えられた素晴らしく細い身体を向けることなくしらをきった。
「意味がわからん」
「嘘だな。“そうなって”どの位だ?」
内心楓は舌打ちをした。
いつかは突っ込まれるだろうと予想はしていたがやはり振り返ることなく、逆に尋ねた。
「お前こそあの朱い鳥が日中も人になれる細工などよく行ったな」
肘をつきながら凪は含み笑いをして楓の頭に向けて葉っぱを投げた。
「やきもちか?案外浅い男だな」
「…」
言い返せない。
そうかと言われればそうなる。
楓は嘘をつかない。
「馬鹿正直な奴だな。ま、俺はいずれ別れの来る奴らを面白おかしく眺めるつもりだったんだが…今は少なくともそれを後悔している」
――ぼそりと慚愧の思いを口にした凪をようやく振り返った。
「お前はこのまま颯太様にお仕えする気か?」
「あ?あー、そうだな。ひとまず神とやらと対面するまでは居るつもりだぜ」
「…神は颯太様のお命を奪うつもりだろうか?何の権利があってそんな…」
凪がひらりと楓の前に着地し、ほとんど動かない楓の表情に苦渋が滲み出ているのを見ると、肩を叩いた。
「唯一絶対神故、全てのこの世界の理を司る。人の命など、この葉っぱをちぎるようなもんさ」
肩についていた葉っぱを凪が払いながら歩き出した。
「話の通じる奴ならいいが。夢に出てきたあいつは…怒りに満ち溢れていた。言葉を交わすことなく殺されるかもしれん。碧い鳥は一羽のみ。つがいも造られず生涯を神と共に歩むはずだったんだ」
それを人間などに奪われた神。
人間などにうつつを抜かし、去った碧い鳥。
「その末裔である颯太が、天命を終えることなくひねり殺される可能性もある。お前もさあ、嫉妬なんかしてる暇があるなら、もっと剣の腕を磨いたらどうだ?」
――凪に諭され、ぎっと睨むと凪は笑いながら立ち去って行った。
「そうさ…俺は醜い男だ」
唯一愛している人が男だとはな――
「健気だねえ」
それをさらに屋根の上から凪が観察しつつ茶々を入れる。
楓は厳戒にまで鍛えられた素晴らしく細い身体を向けることなくしらをきった。
「意味がわからん」
「嘘だな。“そうなって”どの位だ?」
内心楓は舌打ちをした。
いつかは突っ込まれるだろうと予想はしていたがやはり振り返ることなく、逆に尋ねた。
「お前こそあの朱い鳥が日中も人になれる細工などよく行ったな」
肘をつきながら凪は含み笑いをして楓の頭に向けて葉っぱを投げた。
「やきもちか?案外浅い男だな」
「…」
言い返せない。
そうかと言われればそうなる。
楓は嘘をつかない。
「馬鹿正直な奴だな。ま、俺はいずれ別れの来る奴らを面白おかしく眺めるつもりだったんだが…今は少なくともそれを後悔している」
――ぼそりと慚愧の思いを口にした凪をようやく振り返った。
「お前はこのまま颯太様にお仕えする気か?」
「あ?あー、そうだな。ひとまず神とやらと対面するまでは居るつもりだぜ」
「…神は颯太様のお命を奪うつもりだろうか?何の権利があってそんな…」
凪がひらりと楓の前に着地し、ほとんど動かない楓の表情に苦渋が滲み出ているのを見ると、肩を叩いた。
「唯一絶対神故、全てのこの世界の理を司る。人の命など、この葉っぱをちぎるようなもんさ」
肩についていた葉っぱを凪が払いながら歩き出した。
「話の通じる奴ならいいが。夢に出てきたあいつは…怒りに満ち溢れていた。言葉を交わすことなく殺されるかもしれん。碧い鳥は一羽のみ。つがいも造られず生涯を神と共に歩むはずだったんだ」
それを人間などに奪われた神。
人間などにうつつを抜かし、去った碧い鳥。
「その末裔である颯太が、天命を終えることなくひねり殺される可能性もある。お前もさあ、嫉妬なんかしてる暇があるなら、もっと剣の腕を磨いたらどうだ?」
――凪に諭され、ぎっと睨むと凪は笑いながら立ち去って行った。
「そうさ…俺は醜い男だ」
唯一愛している人が男だとはな――