アカイトリ
その場に居た全員が我が耳を疑った。
だが男ははっきりと笑顔で言ったのだ。
「…あれ?僕…おかしいこと言いました?」
固まってしまっていた楓は颯太の前に立ちはだかった。
「何者だ貴様!」
問うと、また頓着なく笑う。
腰には剣が下がっているが、それをこちらに振り下ろす気配はない。
「あ、僕?僕の名前を聞いてるんですよね?僕は伊織と言います。よろしく」
…よろしくも何も、これから斬り結ぼうという相手を前に、この伊織と名乗った男は悠長に両手を下げたまま微笑している。
「楓…話せる相手かもしれん。控えてくれるか?」
「…はい」
だが楓は半歩下がっただけ。
颯太は伊織に小さく頭を下げた。
「失礼した。俺は颯太。この家の当主ではないが、一族最後の一子。何故ここがわかった?」
肩をすくめて愚問だと表現する伊織に、颯太は不可解な思いを隠せない。
…殺しに来たと言ったのにこの余裕…
対話は可能であればいいが…
「見つけること自体はものすごく簡単でしたよ。この街は有名だし、碧い鳥と交わった一族が存在することは歴史を知っている者ならば簡単に探せますよ」
ただ不気味に下げていた手を腰にあて、伊織は首を傾げた。
「神の夢は見ました?」
「…ああ、見た」
「僕も見ました。『碧い鳥の一族を滅ぼせ』と何度も言われましたよ」
ものすごく不気味な内容を、どこか気の抜けた調子で話す伊織。
だが眼鏡の奥の瞳が光った。
「僕はあなたをどうしても殺さなくちゃいけないんです。理由を聞きたいですか?」
「少し待ってくれ。対話は…不可能だろうか?他に道は?」
「ないからここにこうやって来てるんじゃないですか。で、聞きたいですか?」
――と言うよりも、“聞いてほしい”という口調で唇を尖らせる伊織には誰もが閉口している。
「知りたいな。何故だ?」
「ああ、ようやく聞いてくれましたね!それはね…」
おもむろに、着ていた少し大きめの長袖の『しゃつ』をめくる。
「…!」
「こういうわけなんです」
――そこには…
だが男ははっきりと笑顔で言ったのだ。
「…あれ?僕…おかしいこと言いました?」
固まってしまっていた楓は颯太の前に立ちはだかった。
「何者だ貴様!」
問うと、また頓着なく笑う。
腰には剣が下がっているが、それをこちらに振り下ろす気配はない。
「あ、僕?僕の名前を聞いてるんですよね?僕は伊織と言います。よろしく」
…よろしくも何も、これから斬り結ぼうという相手を前に、この伊織と名乗った男は悠長に両手を下げたまま微笑している。
「楓…話せる相手かもしれん。控えてくれるか?」
「…はい」
だが楓は半歩下がっただけ。
颯太は伊織に小さく頭を下げた。
「失礼した。俺は颯太。この家の当主ではないが、一族最後の一子。何故ここがわかった?」
肩をすくめて愚問だと表現する伊織に、颯太は不可解な思いを隠せない。
…殺しに来たと言ったのにこの余裕…
対話は可能であればいいが…
「見つけること自体はものすごく簡単でしたよ。この街は有名だし、碧い鳥と交わった一族が存在することは歴史を知っている者ならば簡単に探せますよ」
ただ不気味に下げていた手を腰にあて、伊織は首を傾げた。
「神の夢は見ました?」
「…ああ、見た」
「僕も見ました。『碧い鳥の一族を滅ぼせ』と何度も言われましたよ」
ものすごく不気味な内容を、どこか気の抜けた調子で話す伊織。
だが眼鏡の奥の瞳が光った。
「僕はあなたをどうしても殺さなくちゃいけないんです。理由を聞きたいですか?」
「少し待ってくれ。対話は…不可能だろうか?他に道は?」
「ないからここにこうやって来てるんじゃないですか。で、聞きたいですか?」
――と言うよりも、“聞いてほしい”という口調で唇を尖らせる伊織には誰もが閉口している。
「知りたいな。何故だ?」
「ああ、ようやく聞いてくれましたね!それはね…」
おもむろに、着ていた少し大きめの長袖の『しゃつ』をめくる。
「…!」
「こういうわけなんです」
――そこには…