アカイトリ
一度この世界は水に浸かり、滅びた。
文明がほぼ絶頂期に訪れた大洪水は、ありとあらゆるものを飲み込み、あらゆる命を奪った。
神に創造されし神の鳥の一族は、その様子を楽園から追放される直前に目の当たりにした。
神の怒り――
“慈しんでやったのに”、と嘆いた創造主。
神よ。
わたしたちが、何をしたというのでしょう?
あなたに愛され、喜ばれることが生き甲斐でわたしたちは生まれたのに。
もう、わたしたちは必要ないのでしょうか?
わたしがしたことは、
あなたをそんなに傷つけたのでしょうか…?
――天花ははっと目を覚ました。
…夢、か…
楽園も神も知りはしない。
ましてや、親の顔も兄弟がいるかも。知りはしない。
障子に首を捩込んで外へ出る。
碧い、空だ。
悠々とこの翼で羽ばたき、まだ見ぬ同朋を求めて数千年もの間を孤独に生きてきた。
碧よ。
わたしがここに居るのは、何か意味があることなのだろうか?
「起きたか。早起きだな」
――昨晩この身を求めてきた颯太が縁側を歩いてきて隣に座った。
これみよがしに、手にしていた書物を天花に見せる。
「これが何だかわかるか?」
…答えようがない。
颯太は空気でそれを悟ると、頁をめくった。
「では、これがなんだかわかるか?」
…藍色の、3つの鉤爪。
実際の、碧い鳥の署名ともいえる足跡だ。
「昨晩話した、碧が残した書物だ。読みたいか?」
天花は大きく首を上下に振ってそれに応える。
颯太が何やら楽しげに笑うと、自分の膝をぽんぽんと叩いた。
「俺の膝に乗れ。そしたら、見せてやる」
「…!」
誰が人間の膝になど…
いや…だがしかし、碧が伝えたいことが書いてあるかもしれない。
神に呪われた原因となった碧い鳥よ。
わたしが、あなたを裁いてやる――
文明がほぼ絶頂期に訪れた大洪水は、ありとあらゆるものを飲み込み、あらゆる命を奪った。
神に創造されし神の鳥の一族は、その様子を楽園から追放される直前に目の当たりにした。
神の怒り――
“慈しんでやったのに”、と嘆いた創造主。
神よ。
わたしたちが、何をしたというのでしょう?
あなたに愛され、喜ばれることが生き甲斐でわたしたちは生まれたのに。
もう、わたしたちは必要ないのでしょうか?
わたしがしたことは、
あなたをそんなに傷つけたのでしょうか…?
――天花ははっと目を覚ました。
…夢、か…
楽園も神も知りはしない。
ましてや、親の顔も兄弟がいるかも。知りはしない。
障子に首を捩込んで外へ出る。
碧い、空だ。
悠々とこの翼で羽ばたき、まだ見ぬ同朋を求めて数千年もの間を孤独に生きてきた。
碧よ。
わたしがここに居るのは、何か意味があることなのだろうか?
「起きたか。早起きだな」
――昨晩この身を求めてきた颯太が縁側を歩いてきて隣に座った。
これみよがしに、手にしていた書物を天花に見せる。
「これが何だかわかるか?」
…答えようがない。
颯太は空気でそれを悟ると、頁をめくった。
「では、これがなんだかわかるか?」
…藍色の、3つの鉤爪。
実際の、碧い鳥の署名ともいえる足跡だ。
「昨晩話した、碧が残した書物だ。読みたいか?」
天花は大きく首を上下に振ってそれに応える。
颯太が何やら楽しげに笑うと、自分の膝をぽんぽんと叩いた。
「俺の膝に乗れ。そしたら、見せてやる」
「…!」
誰が人間の膝になど…
いや…だがしかし、碧が伝えたいことが書いてあるかもしれない。
神に呪われた原因となった碧い鳥よ。
わたしが、あなたを裁いてやる――