アカイトリ
とにかく今はこの男の言う通りにしなければならない。


天花は腹を括って颯太の膝へ乗った。


朝陽に照らされて、真っ赤な身体がさらに美しく輝く。


「ちなみに、人に変わった時にも膝に乗ってもらうからな」


…なんということか。


だが今は耐えなければいけない。

本当ならば手でも突いて怪我をさせてやりたいところだが、その衝動にはなんとか耐えた。


「天花…俺が昨晩お前にしたことを謝りはしないぞ」


頭を、限りなく優しく撫でられた。


見上げると、しごく真面目な表情になっている。



「お前の本性は鳥。獣だが、お前を否定してしまうと、俺自身をも否定することになる。…俺はきっと、短命に終わる」



そう静かに告白する颯太をただじっと天花は朱い瞳で見上げる。


「長きに渡り、血は薄くなり、代は俺で途絶えるだろうが、その前にお前に出会えた」


今度は、背中の部分を上下に撫でられた。


「碧は悔いていたが、始祖と結ばれたことは創造されてから最大の喜びだったそうだ」


…喜びか。


それは一体どんなものだろうか?


それは、何物にも代えがたいものだろうか?


わたしも、


それを感じることができるだろうか?


途方もないことに感じられる。


人間から喜びを与えられた碧――


わたしたちは、与える側ではないのだろうか――?
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