アカイトリ
心とは裏腹の拒絶を繰り返す。


途方もなく長い年月の間に、きっと魂も擦り減った。


もう、死にたい。


そう思ったことは、一度や二度ではなかった。



これこそが、神の呪い――



生まれる前から決まっていた、我々神の鳥への恐ろしい運命――



わたしも全てを呪うしかなかった。



その果てに出会ったのは碧い鳥の末裔…



邂逅の末に巡り合った鳥。


いや。鳥ではなく、人だった…



どうしてこんなに人間が憎いのかももう分からない。


僥倖だと感じつつも、捕らえられたことへの怒りが先に立ち、この男…


颯太が、一族が自分と同じ目的の下、出会ったことへの喜びが二の先になっていた。



そして今わたしがこの男に求められ、抱きたいという。


ああ。


わたしは気が狂っているかもしれない…


身体を。


心を。



許してしまいそうになる――



――…香る。


色違いの間に子は生まれないというのに。


この男が発する香りに、思考も奪われてしまう…


「天花…」



何度も名前を呼ばれる。



名などなかったこのわたしに名を付けたこの男――



天花、と何度も名を呼ばれる。



その響きは心地よく、

『天上に咲く花のように美しい』という意味だと教えられた。



天など、神など、わたしは知りはしないのに…



――つう、と頬を伝った涙を見て、颯太は手を止めた。


泣かせるつもりなどなかった。

でもこの鳥を前にして、平常心ではいられないのだ。


「天花…天花……」


何度も何度も名を呼ばれ、天花は涙に濡れる睫毛にそっと触れる颯太を見つめる。



「お前を大切にしたい。お前に受け入れられたい。だから心を開いてくれ――…」



想像もできないほど優しすぎる声で。

せつない表情で。


それを見て、天花は両手で顔を覆った。



愛してしまいそうだ――
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