アカイトリ
天花を膝に乗せたまま、颯太は自身の感情を一切排除した口調で碧い鳥の遺言を読み始めた。
『いつか見ぬ同朋がこの遺言を見ることを信じて、我…碧い鳥の“葵(アオイ)”がここに記す。
神に創造されし最初の一羽目である我は使命を持って地上へ降りた。
命令されなければ、地上へなどと行くことはなかっただろう。
気まぐれに神は我を遣わしたが、
我は人の男、須王(スオウ)に巡り会った。
生まれてから最大の喜びを感じ、また須王のために生きたいと感じた。
短い蜜月の後、神より最大の裏切りであると罵られ、我は地上へ墜とされた。
我だけではなく、神より創造された全ての鳥に同じ呪いが降り懸かっているはずだ。
すまない、同朋よ。
どうしても
どうしても
須王のために生きて、死にたかった。
だが神の怒りは収まらず、地上を一掃しようと神が放った大洪水は、全てを飲み込んだ。
いや
我は最期の力でもって、それに抵抗したのだ。
許されぬ。
神を愛していた。
造られた時からこの方の為だけに歌い、永遠を共にするはずだったのに、
神の気まぐれで地上へ降り…
神から怒りを買い、我は須王を失いし今、死ぬだろう。
同朋よ、想像できるだろうか?
我々は、愛を知り、愛のために死ぬことができるのだ。
どれほどそれは喜びを感じることだろうか?
須王は我を愛し、また我も須王を愛した。
人は決して愚かではない。
我は、喜びを感じつつ滅びる。
まだ見ぬ同朋よ。
我を呪うがいい。
だがわかってほしい。
我々神に造られし鳥の一族は不滅の鳥ではない。
人のために死ねる、神以外を愛することができる鳥なのだ。
優しい人に出会うことがあれば、己の全てを見せなさい。我が愛した、我が須王にしたように』
――天花の瞳から再び涙が零れ出た。
『いつか見ぬ同朋がこの遺言を見ることを信じて、我…碧い鳥の“葵(アオイ)”がここに記す。
神に創造されし最初の一羽目である我は使命を持って地上へ降りた。
命令されなければ、地上へなどと行くことはなかっただろう。
気まぐれに神は我を遣わしたが、
我は人の男、須王(スオウ)に巡り会った。
生まれてから最大の喜びを感じ、また須王のために生きたいと感じた。
短い蜜月の後、神より最大の裏切りであると罵られ、我は地上へ墜とされた。
我だけではなく、神より創造された全ての鳥に同じ呪いが降り懸かっているはずだ。
すまない、同朋よ。
どうしても
どうしても
須王のために生きて、死にたかった。
だが神の怒りは収まらず、地上を一掃しようと神が放った大洪水は、全てを飲み込んだ。
いや
我は最期の力でもって、それに抵抗したのだ。
許されぬ。
神を愛していた。
造られた時からこの方の為だけに歌い、永遠を共にするはずだったのに、
神の気まぐれで地上へ降り…
神から怒りを買い、我は須王を失いし今、死ぬだろう。
同朋よ、想像できるだろうか?
我々は、愛を知り、愛のために死ぬことができるのだ。
どれほどそれは喜びを感じることだろうか?
須王は我を愛し、また我も須王を愛した。
人は決して愚かではない。
我は、喜びを感じつつ滅びる。
まだ見ぬ同朋よ。
我を呪うがいい。
だがわかってほしい。
我々神に造られし鳥の一族は不滅の鳥ではない。
人のために死ねる、神以外を愛することができる鳥なのだ。
優しい人に出会うことがあれば、己の全てを見せなさい。我が愛した、我が須王にしたように』
――天花の瞳から再び涙が零れ出た。