アカイトリ
「神の剣…だと?」


これに関しては多くを語りたくない。


だが、それが存在するのは事実だ。


生まれた直後に父母、先祖から心に穿たれたように様々な記憶や…

神と人間への呪詛が、植え付けられた。


その記憶の中に、神の剣の存在もあった。


「それで斬れば、お前は死ぬのか?」


「おい、物騒な話をしてるな」


責めてはいないが、笑ってもいない口調で颯太が喧嘩腰の楓を窘める。


手にはとっくりと、おちょこ。


「どうだ、お前も一杯やるか?」


「…いえ、私は。颯太様、本日は下がらせて頂きます」


ああ、と返事した颯太の顔も見ずに、楓は逃げるように退席する。


「なんだあいつ。変な奴だな」


「どこまで話を聞いていた?」


「ん?神の剣のことか?」


しっかり聞いていたようだ。

天花は再び紙を拾い集めて机の上に乗せた。


「人という生き物は…欲まみれだな」


「ああ、否定はせんぞ。心があるから欲が生まれる。力があれば、どこまでも際限なく欲望は生まれる。死んでもなお、亡霊となるほどにな」


ほら、と天花におちょこを手渡す。

天花がその小さな白磁の杯を両手で持つと首をかしげた。


「何だこれは」


「これは酒だ。美味いぞ」


…何度も飲食は必要ないと説明したのだが、いっかな颯太が聞く耳を持たないため、最近天花は人のように食べたり飲んだりするようになっていた。


「ほら、飲め」


「神の剣の話だが…」


「その話も聞くから、先に飲んでみろよ」


にこにこ笑顔で押し切られ、なみなみ注がれた透明の飲み物を、天花は一気に飲み干した。


「おっ?さてはいける口だな」


「……っ????」


直後。

かっと全身が熱くなり、顔に火がついたように赤くなった。


「で?神の剣が何だ?」


「あ…えと…神の剣とは…」


ぐるぐると視界が回る…


急に体重がなくなる感じがして、気がつくと颯太の膝に抱かれていた。


耳元で颯太が低く気持ちの良い声で囁く。



「神の剣とは…お前たち神の鳥を人為的に殺めることができる、唯一の剣だ」


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