アカイトリ
自分が発した言葉で、蘭は発火してしまいそうなほどに恥ずかしくなる。


がたっと椅子を倒して立ち上がり、ずるずると後ずさりした。


「もっ申し訳ありません…っ忘れてください、ほんと、忘れて…」


「蘭…お前…」


…とうとう、感づかれた?!

それこそ、本望ではあったが、逆に気付かれたくもなかった。


あの朱い鳥には、勝てない――…


両手で顔を覆った蘭の手を外し、颯太が優しくぎゅっと蘭を抱きしめた。


かちり。


時計が、12時を指した。


もう、死んでもいい・・・…!


――すると、颯太がぽんぽんと蘭の頭を撫でる。


「そうか…男日照りが長かったんだな、可哀相に」


…えぇーーー!?


「そ…颯太…様?」


「いや、いいんだぞ蘭。長くこの屋敷に仕えて忙しくしてるもんな、男日照りにもなるよな、気付いてやれなくてすまなかった」


そう言い、両腕で抱きしめてくれる颯太に怒っていいのか、泣いていいのかわからなくなる。


…とりあえず誤解はあるものの、蘭も強く抱きついた。


かちこち、と時計の音だけが響く。


「…蘭」


「……はい?」


すると、颯太が腰に手を下ろしてぎゅっと身体を密着させる。



「お前、華奢だが案外胸があるな」


「…!!や、やだ、やめてください颯太様っ」



本気で恥ずかしがる蘭に、颯太は微かな愛情を感じつつ、蘭の短い髪を撫でる。


「今までの俺は何もかもに余裕がなかったが、これからはお前の誕生日も一緒に祝ってやれる。使命を果たす時が来たから…」


…何を言っていいのかわからなかったので、颯太のたくましい胸に頬をこすりつけた。


「…いかん」


「…ど、どうしたんですか?」


颯太は身体を離して蘭の顔を屈んで覗き込んだ。

そして、蘭の左耳に、先程まで手遊びしていた薔薇を挿す。



「蘭、お前が可愛くて抱いてしまいそうだから、部屋に戻る」



じゃあ、と言って台所を出て行った颯太を見送り、蘭はへなへなとその場に座り込む。

涙が零れた。



「…抱いてよ……」



25回目の誕生日は、しょっぱくて、嬉しくて、悲しかった――
< 55 / 160 >

この作品をシェア

pagetop