アカイトリ
颯太はいつも忙しくしている。
誰かに話しかけられては立ち止まり、また誰かが訪れては、話し込む。
天花の昼時はそういった風景を眺める毎日が続く。
だが、時々屋根を見上げに来ては、おおい、と声をかけてきては手を振ってくるのだ。
あの男・…
使用人たちと話をしろと言ったな…
一体それで何が始まるというのか。
――馴れ合うのは性に合わない。
むしろ、独りが長かったから、それがどんなものかもよくわからない。
…あたたかいのだろうか?
夜を迎え、天花は人に変わる間際に部屋へ入り、その時を待った。
――その様子を盗み見していた者がいる。
鎌を手に持ち、庭園の雑草を刈っていた芹生だ。
「まただー。あの鳥が入った後に、天花…様だっけ?あの人が部屋から出てくるんだよね」
知りたくて仕方ない。
だが、蘭に固くそれを禁じられていた。
芹生は鎌を地面に置くと、縁側に腰掛けて子供のように足をぶらぶらさせた。
「なんだっけ、あの童話。見ちゃいけないよって言われてるのに戸を開けちゃって…」
「約束を守らなかったから、愛想を尽かされて逃げられる話だな」
ん…?
いつの間にか颯太が手に本を持ち、楓を従えて芹生の居る縁側を歩いて自室の障子を開ける。
「あれに愛想を尽かされてはたまらん。約束は守るんだぞ」
「はっ、はい、ご主人様っ」
緊張しつつ頭を下げると、にかっと人好きのする笑顔を浮かべ、部屋へ入って行った。
「うおーっ、緊張するーっ」
すると今度は、すらりと前方の障子が開き、天花が出てきた。
「一体どうなってるんだろ?」
まるで、鳥が人間に化けて人間を惑わしているような…
――いかんせん、常識が邪魔をして、芹生はすぐにその予想を打ち消した。
いつものように裸足で天花が庭園を渡ってくる。
…また無視されるんだろうけど、声をかけてみよう。
「天花様、こんにち…いや、こんばんはかな?」
ぼそぼそと独り言のように声をかけると、天花が立ち止まった。
じっと芹生を見つめる。
芹生は変な汗が全身から吹き出した。
「…こん…ばんは」
ぎこちなく返された挨拶に、芹生は思わずぽかんと口を開けた。
誰かに話しかけられては立ち止まり、また誰かが訪れては、話し込む。
天花の昼時はそういった風景を眺める毎日が続く。
だが、時々屋根を見上げに来ては、おおい、と声をかけてきては手を振ってくるのだ。
あの男・…
使用人たちと話をしろと言ったな…
一体それで何が始まるというのか。
――馴れ合うのは性に合わない。
むしろ、独りが長かったから、それがどんなものかもよくわからない。
…あたたかいのだろうか?
夜を迎え、天花は人に変わる間際に部屋へ入り、その時を待った。
――その様子を盗み見していた者がいる。
鎌を手に持ち、庭園の雑草を刈っていた芹生だ。
「まただー。あの鳥が入った後に、天花…様だっけ?あの人が部屋から出てくるんだよね」
知りたくて仕方ない。
だが、蘭に固くそれを禁じられていた。
芹生は鎌を地面に置くと、縁側に腰掛けて子供のように足をぶらぶらさせた。
「なんだっけ、あの童話。見ちゃいけないよって言われてるのに戸を開けちゃって…」
「約束を守らなかったから、愛想を尽かされて逃げられる話だな」
ん…?
いつの間にか颯太が手に本を持ち、楓を従えて芹生の居る縁側を歩いて自室の障子を開ける。
「あれに愛想を尽かされてはたまらん。約束は守るんだぞ」
「はっ、はい、ご主人様っ」
緊張しつつ頭を下げると、にかっと人好きのする笑顔を浮かべ、部屋へ入って行った。
「うおーっ、緊張するーっ」
すると今度は、すらりと前方の障子が開き、天花が出てきた。
「一体どうなってるんだろ?」
まるで、鳥が人間に化けて人間を惑わしているような…
――いかんせん、常識が邪魔をして、芹生はすぐにその予想を打ち消した。
いつものように裸足で天花が庭園を渡ってくる。
…また無視されるんだろうけど、声をかけてみよう。
「天花様、こんにち…いや、こんばんはかな?」
ぼそぼそと独り言のように声をかけると、天花が立ち止まった。
じっと芹生を見つめる。
芹生は変な汗が全身から吹き出した。
「…こん…ばんは」
ぎこちなく返された挨拶に、芹生は思わずぽかんと口を開けた。