アカイトリ
背中から颯太を抱えながら、楓は馬の腹に蹴りを入れてひたすら早く走らせた。
邪悪な殺気だった。
決して、剣を交えたくないと思った。
颯太の服は鮮血でどす黒く染まっている。
「くそっ、俺は何もできなかった…!」
――街中をひたすら駆ける。
途中、どこで馬を調達したのか、天花がどうにか馬を操りながら駆けてきた。
「助かるか…!?」
「…わからん。傷が深い。お前…お前のせいだぞ!!」
…憎しみの塊をぶつけられ、天花は唇を噛み締める。
手綱を握っている手には、べったりと颯太の血が張り付いていた。
「もし颯太様がこのまま・・・・・・」
楓はその先を続けることができずに言葉を飲み込むと、天花に向けてぎっと瞳を吊り上げた。
「…お前を殺す。どんな手段を使ってでも、息の音を止めてやる」
「…その男が死んだら…きっとわたしも、生きてはいないだろう…」
それは微かな確信であったが、意外と素直に天花はそれを受け入れ、馬に乗ることに集中した。
――激しい蹄の音が近づいてくる。
「なに?何の騒ぎ?」
蘭は庭を掃きながら顔を上げた。
馬の嘶きと共に、屋敷へ飛び込んでくる。
「あれは…楓と…?」
青ざめた表情の楓が抱えて走ってきたのは。血の気が失せて、顔が真っ白になった颯太だった。
服が大きく避け、鮮血に染まっている。
「きゃあーーっ!そ…っ、颯太様ぁ!!」
蘭の絶叫に、使用人達がわらわらと出てきては颯太を見て悲鳴を上げる。
「医者を呼べ!早く!!」
滅多に怒鳴らない楓に命令され、使用人の一人が屋敷を飛び出した。
楓は傷口を刺激しないように、かつ迅速に颯太の部屋へ運び入れる。
「蘭、隼人様を呼べ。颯太様の命が…危ない」
――がたがたと蘭は震え始めた。
「颯太様…颯太様!!」
馬鹿のひとつ覚えのように名しか呼べない。
すらり
障子が開き、天花が入ってくる。
「あんたの…あんたのせいなの!?」
その憎しみのこもった叫びに、天花は瞳を閉じた。
邪悪な殺気だった。
決して、剣を交えたくないと思った。
颯太の服は鮮血でどす黒く染まっている。
「くそっ、俺は何もできなかった…!」
――街中をひたすら駆ける。
途中、どこで馬を調達したのか、天花がどうにか馬を操りながら駆けてきた。
「助かるか…!?」
「…わからん。傷が深い。お前…お前のせいだぞ!!」
…憎しみの塊をぶつけられ、天花は唇を噛み締める。
手綱を握っている手には、べったりと颯太の血が張り付いていた。
「もし颯太様がこのまま・・・・・・」
楓はその先を続けることができずに言葉を飲み込むと、天花に向けてぎっと瞳を吊り上げた。
「…お前を殺す。どんな手段を使ってでも、息の音を止めてやる」
「…その男が死んだら…きっとわたしも、生きてはいないだろう…」
それは微かな確信であったが、意外と素直に天花はそれを受け入れ、馬に乗ることに集中した。
――激しい蹄の音が近づいてくる。
「なに?何の騒ぎ?」
蘭は庭を掃きながら顔を上げた。
馬の嘶きと共に、屋敷へ飛び込んでくる。
「あれは…楓と…?」
青ざめた表情の楓が抱えて走ってきたのは。血の気が失せて、顔が真っ白になった颯太だった。
服が大きく避け、鮮血に染まっている。
「きゃあーーっ!そ…っ、颯太様ぁ!!」
蘭の絶叫に、使用人達がわらわらと出てきては颯太を見て悲鳴を上げる。
「医者を呼べ!早く!!」
滅多に怒鳴らない楓に命令され、使用人の一人が屋敷を飛び出した。
楓は傷口を刺激しないように、かつ迅速に颯太の部屋へ運び入れる。
「蘭、隼人様を呼べ。颯太様の命が…危ない」
――がたがたと蘭は震え始めた。
「颯太様…颯太様!!」
馬鹿のひとつ覚えのように名しか呼べない。
すらり
障子が開き、天花が入ってくる。
「あんたの…あんたのせいなの!?」
その憎しみのこもった叫びに、天花は瞳を閉じた。