~リアル昔話し'08~
-3- ~終幕~
「カメさん、初めまして。僕は以前あなたとの死闘に敗れて命を落としたウサギの末裔です。
突然ですが、失礼を承知で申し上げます。僕と真剣勝負をして頂けませんか」
マヌケな親子との壮絶な戦いから数十年。カメの前に三度、戦いを挑むウサギが現れた。
「おや、懐かしいセリフですね…いいでしょう、受けて立ちますよ」
「ありがとうございます!! 全力を尽くします」
先祖の無念を晴らすべく、もう後のない最終戦。
なりフリ構っていられない崖っぷちのウサギ陣営が選んだ種目は“100m”
油断も天敵も、オマケに辺り一帯一族総出で取り囲む完全ホームゲーム。
血戦の地の河川敷には、この伝統の一戦を見逃すまいと、数百匹のウサギが大応援団を引き連れ集まった。
「いてまえコラァ――」「ワレぇ、生きて返すなや――」
一方何から何まで完全アウェイのカメ。
興奮状態収まらないギャラリーの異様な雰囲気にも心乱すことなく、静かに精神統一に努めるウサギ(末)。
「位置について‥‥ようい―――」
バァーン!!
一族の威信と誇りをかけた、決戦の火蓋は切って落とされた。