~リアル昔話し'08~
【ツルの恩返し】
-1-
いつも通り定時に仕事を終え、帰宅する途中だった。
僕はワナにかかって身動きのとれなくなっている、一羽のツルを見つけた。
「可哀想に…」
僕は迷わずワナを取り外し、傷ついた脚に応急的ではあるが治療を施した。
「もう捕まるんじゃないよ」
ツルは元気な様子で空に飛び昇がっていった。
それを見て、僕は嬉しくなった。
気分良く家に帰り、先程の事を妻に報告すると、笑って言った。
「まぁ、それはエライわ」
「いやぁ~、そんな褒められる程の事でもないよ」
少し照れながら僕が答えると妻はつかさず
「そんな事ないわ、きっと少しでも家計のたしになればと、仕掛けていたに違いないわ。
アナタにも見習って欲しいものね」
「えっ、あ、そっちかぁ‥‥」
呆れ顔の妻は、僕の行動を真っ向から否定した。
しまいには、なぜ盗ってこなかったのか、と罵られた。
とてつもなく切なくなってしまった。
急に無気力、脱力感に襲われた僕はさっさと布団に入った。
「明日も早い、もう寝よう…」